第6回公開授業
  
技術・家庭「考えるレポート発表会/ネットでコラボレーションクイズ」

研究授業
意見交換会  

平成14年2月22日(金) 第5・6限
清教学園中学校 http://www.seikyo.ed.jp
3年A組
授業者 佐竹 学



研究授業 技術・家庭「考えるレポート発表会/ネットでコラボレーションクイズ」

 

  前回に引き続き中学校での公開授業。しかも今回は2本立てです。1つ目は、国語の時間に作成したレポートのプレゼンテーション「考えるレポート発表会」。もう1つは、メーリングリスト(ML)を活用して、チームプレーで問題を解く、「MLコラボレーションクイズ」です。

 

考えるレポート発表会 指導案(PDF)

 清教学園では、国語の時間に新書などを読み、レポートにまとめる「考えるレポート」という課題を3年次に実施しています。これまで、レポート作成に、一部、技術・家庭科の時間を活用して、ワープロソフトの指導をされていました。本時は、レポートの内容をPowerPointにまとめ、プレゼンテーションする発表会の場面でした。

 1人1人、ヘッドセットマイクをつけての発表です。アドリブをいれたりしながら、堂々と発表する生徒もいれば、メモを見ながらでも頑張って取り組んでいる生徒もいました。司会進行も、生徒が持ち回りで担当します。声の大きさ、スライドを効果的に使っているか、内容に説得力はあるか、総合的にどうか、の4つの観点から、生徒間で相互評価するカードも配られていました。

 「野球」「集中力」「敬語」と、とりあげるテーマはさまざま。読んでいる本も、生徒によっては8冊ほどの本を読みこなし、レポートにまとめあげているそうです。1年かけて取り組んできた課題だけに、それぞれにこだわりのある、充実したプレゼンテーションでした。

 

生徒作品

   
現代野球の真実 レポート(PDF)
集中力について レポート(PDF)
敬語と上下関係 レポート(PDF)
自閉症 レポート(PDF)
数学とのつきあい方 レポート(PDF)
過去を手放せない生物・人間 レポート(PDF)

 

 

ネットでコラボレーションクイズ 指導案(PDF)

 さて、もう1つの授業。6限目は、ネットワークを使ったクイズ形式の授業です。ちょっと複雑なしかけがされていますので、箇条書きで説明します。

  • 1クラスを4グループにわけ、それぞれメーリングリスト(ML)がイントラネット上で利用できます。
  • 「アメリカ国旗に赤い線は何本あるか?」などの問題をWeb検索で答えを見つける課題です。
  • 問題は4問。与えられた時間は10分。1人ではとても間に合いません。MLで協力してすすめます。
  • さらに、MLには、教師がランダムに生徒に「成りすまし」、デマメールを投稿します。デマを見抜いて、騙されないようにしないといけません。
  • グループごとの正解数の平均点で 評価します。


 このような設定で2回チャレンジしました。ML上では、「この検索サイトの方が速い」といったノウハウを共有するなど、協力して、問題を解く姿勢が見られました。また、1回戦目と2回戦目の間に、「作戦タイム」を設けたことで、2回目には、「僕は3番目を解く」「私は2番!」といった分担もする様子も。結果は、校内サーバで動く自作CGI(Web上で動くプログラム)で集計され、すぐに表示されます。チームワークのおかげで、平均点は、2回目は1回目よりもアップしていました。

 メール、メーリングリスト、Web検索の技術、情報モラル、ネット上でのコラボレーション。さまざまな要素を、実際に体験しながら学ぶ、内容の濃い授業でした。

問題1問題2

集計結果1集計結果2

MLのログ・授業の感想

授業者からひとこと

発表会について

 公開授業後、発表した生徒は「足が震えた」「いつもの声が出せなかった」「自分で何を話してるか分からへんかった」と一様に緊張していたようです。私から見ても、その緊張は伝わってきましたが、結果的には空回りすることなく上手に発表できていたと思います。むしろ大勢の人がいる難しい場面を想定し、準備を十分に行い、発表をやり遂げる、彼らの実行力に敬服しました。

コラボレーションクイズについて

 メールやWEBは以前授業でも行いましたが、メーリングリストというツールを実際に利用するのは、ほぼこの日が始めてという状況の中で予想を上回る利用数、意味のある内容に「中学生の適応力はすごい!」と感心させられました。特に当日は、アクセス人数(46人)が原因でWEBが利用しづらい状況にありました。この苦境をメーリングリストの利用で、見事乗り切っていました。

top

意見交換会

 

司会:長尾 尚 先生(信愛女学院)

パネラー:佐竹先生(清教学園)
小林先生(清教学園)
福田先生(清教学園)
  
記録:関西大学大学院 稲垣忠

 2本立ての公開授業をうけ、意見交換会も、2つの授業について、それぞれ議論しました。参加者でコメントを出し合い、授業者の佐竹先生、サポートにあたられた小林先生、考えるレポート発案者の国語の福田先生がコメントされる形式です。

 なお、今回の授業でも、事前に、当キャラバンのホームページで指導案を公開しています。さらに、授業前にネット上で「学習のねらいは?」「評価の方法は?」といったことをコメントできるVB(Virtual Brainstorming)システムも活用し、指導案をブラッシュアップしています(指導案からのリンク参照)。VBでのディスカッションの様子も、佐竹先生にまとめていただいております。

佐竹先生によるVBのまとめ

考えるレポート発表会

Q:「考えるレポート」をはじめたきっかけは?(長尾)
中学生の間に新書が読める力をもってほしい。大学入試の問題、小論文にも役立つ。高校からでは遅い。中高一貫だからこそ、中学3年の段階で1つのハードルとして課してみた。ただ、新書を与えるだけでは、写しておしまいになる。1人1人の興味にあって、読みこなしてこそ書けるレポートにした。 初年度はガイダンス程度で年間5時間、次年度には週に1時間。読むだけでなく、調べたり、別の資料をさがしてまとめるようにした。2学期のおわりにレポートを完成。本文はA4で8枚以上が条件。 少ない子で新書1冊、多い子は8〜9冊は読んでいる。ともかく、小難しい文章とがんばってつきあったという経験をさせたい。(福田)

Q:週1回の国語の時間ではどう指導されているのか?(森本)
静かに読んでる。読んだり、途中で寝てしまったりもするが、とにかくがんばる。次に、要約をさせて、興味をもったところを見つけてくる。夏休みに自宅のインターネットや地域の図書館を使い、調べをすすめる。9月から、それらを持ち寄ってレポートにしていく。情報の時間でワードを習ったので、合流してレポート作成にこぎつけてきた。(福田)
ワークシートも活用して、個別に面談をすすめてきた。B5のファイルをもたせて、そこにどんどん書かせたものを集めるポートフォリオづくりもしている。本を題材にした総合的な学習のイメージ。来年度は、大学の卒論指導のイメージでやってみたい。(福田)
面白いテーマ設定をどうえらばせていくかがポイントですね。最初のうちから、いろんな教科の先生がかかわっていけるとさらによくなるのでは?(長尾)


Q:しあげたレポートを共有していくための手立ては?(長尾)
レポートを書くまでは個別の作業。佐竹先生が、プレゼンテーションを課題にしたいが、中身がない、という話が。そこで、この国語のレポートを、プレゼンテーションをすることになり、共有する場面となった。 今日のプレゼンテーションは枠組みだけで、内容はもっと詰まってはいるが。(福田)
理科系、文科系など、課題ごとにグループわけして取り組むと、生徒間で内容面での共有・深まりが期待できそう。他の生徒のレポートから、プレゼンテーションをつくるという方法もあるのでは(稲垣)

Q:パワーポイントを利用したプレゼンテーションの経験は?(岡田・内田洋行)
発表ははじめて。複数回発表する機会があればよかったのだが。(福田)
ポスターセッション式にすれば、何度も発表することが必要になり、発表のトレーニングにもなる(稲垣)
発表は、上手な生徒と、そうでない子では、かなり開きがあった。2回、3回と発表をして、発表のスキルを高めあう場面がほしい。個人に発表を担わせるだけでなく、グループで分担して発表をすることもできるのでは。他の人の顔を見ながら発表できるような教室のデザインも重要。(大峠)
何を発表させたらいいのか?コンテンツの難しさ。情報科の中だけでは、どうしても薄っぺらくなってしまう。そういう意味で、他教科との連携の意味は大きい。あれだけ新書を読みこなせるのか、ということに感心しました。(森本・堺女子)

Q:評価コメントの書き方をどう指導されているか?発表についての生徒間の話し合い、質疑等は?(帝塚山学院・辻)
声・スライド・説得力・総合をABCの3段回で評価(評価シート参照)。コメントは、具体的ないいところを書くよう指導。 話し合い・質疑は、ぜひ取り入れたいが、国語と技術の合科の中、時数的に難しい。(佐竹)
生徒がどんどん評価シートをつけなきゃいけない、というところに時間がうばわれてて、話の内容まで聞けていなかったようだ。(長尾)
自分で考えたことの発表に、反応がない場合、自分の考えがあっていると思ってしまうかも。他教科の先生が評価するような場面があるといいですね。(長尾)

Q:評価シートの活用の仕方は?
自分で振り返る場面につかってほしいので、集めなおして、発表者にわたします。(佐竹)

 きれいにまとまっている発表よりも、少し日常的な話し言葉が入り、聴いている人に語りかけるような発表(テーマ「敬語と上下関係」)の方が思いのほか好評であったことは意外でした。発表者の顔が見える、人間性がよく出る発表ができる授業展開や、環境作りの必要性を痛感しました。
  生徒にとっても反省点がいくつもあるに違いありません。反省点を克服し、より個性的な発表ができるように、複数回の発表練習があるとよいとも改めて感じました。(佐竹)

ネットでコラボレーションクイズ

Q: キーボード、Web検索など、スキルの高さに驚いた。技術科の中で、PCの時間をどの程度、確保されているのか?(森本)
かなり使ってる。普通の学校より大いのでは。もう少し、技術家庭科としてのバランスもとっていかないといけないとは思っている。(佐竹)

Q:以前、高校生を対象にした、同様の授業を見学した。本時とはスキルの差がみられた。高校生では、デマメールも見破られ、最後に♪マークをつけるなどの工夫をしていた。中学生はけっこう素直にだまされていたのではないか。(大峠)
高校の授業には驚いた。今回の中学生との差は、スキルだけか?(若林:堺第二工業)
以前公開した、高校での授業では、希望者を対象にしたため、スキルは高い。授業の中でも、MLを活用した問題解決をとりいれていた。今回は、MLはほとんど未経験(小林)

Q: デマメールについてのフォロー・ケアについては?(長尾)
「何がおこっても人を恨まない」と最初に言うことを忘れましたけど。生徒からは「そらないやろ!」の声も。もう少し、ケアが必要だったかもしれない。(佐竹)
なりすましを真似しようと思う生徒がでてくるのではないか?一方で、このようなネット上の罠にひっかからないように、実体験から学ばせることも大事だと思う(長尾)

Q:授業としては課題が複雑だったのかもしれない。MLの理解、メールの書き方、成りすまし、デマ情報、ネット上の情報の信じやすさ、チームワーク、さまざまな要素が込められていた。 勝ったチームに、ヒーローインタビューをやると、勝因の共有など、より学習が深まるのでは。(市川)
匿名のチャットにすると、ネット上の情報を信じるかどうか?にしぼりこんだ授業になったのではないか?(稲垣)
いろいろな要素があったが、情報モラル、スキル的な場面を、ひとつひとつ、整理して教えるべきか、今回のように体験の中で学習するべきか?(長尾)
この授業を出発点に教えられることは多いと思う。今までだったらプリントでも配って教えておしまいになっていた。この授業で腹が立ったという経験は大事だ。(岡本)

 メールに「適切な題名をつけること」「自分の名前を本文の中で知らせること」「文末に署名すること」など、授業で触れた内容が、生徒の間ではあまり浸透していなかったことを公開授業で実感しました。そういったマナーは、1コマの授業で説明すれば「OK」ではなく毎回の授業で使う中で、共に考える姿勢が大切であると感じました。話し方、あいさつや制服の着こなしなど、中学校3年間通して身に付けることに似ていると思いました。
 なりすましメールについては、多くの生徒がだまされていた状況がありました。現実は、もっと厳しいことが予想されます。教える立場として、なりすましメールなど迷惑メール、不正アクセスなどに対する認識を高め、正確な情報を生徒に伝えておくことが大切であると感じました。(佐竹)


top back