意見交換会では、授業前にこのホームページ上で実施した「VB」での話し合いの記録をもとに議論をしました。課題設定の仕方,授業時間,グループ分け,評価と4つの観点からあらかじめ意見がでていたため,その意見と実際の授業の感想を交えながら,掘り下げた話し合いができたと思います。また,今回は企業の方からも活発なご発言があり,プレゼンテーションをする時にどんなところがポイントになるか,新しい視点からご意見をいただくことができました。
(Virtual Brainstorming:授業前)
(Virtual Brainstorming:授業後)
課題設定について
Q: 課題設定の時点で,「自分たちはこんなことを伝えたいんだ」という意思表示はどのくらいあったのでしょうか?(吉澤:キャリアリンク)
⇒安全プロジェクトのをみていたんだが,課題が浮かばなかった。「カタイ」テーマばかりになってしまう。生徒に聞くとサッカーばかりになってしまう。サッカーの選手の写真や記事をいれるのは簡単だけど自分のものにはならない。著作権(肖像権)の問題もある。写真や記事の貼り付けを避けるとなると,逆にテーマ設定が難しくなった。そこで学校紹介などを投げかけると,それに飛びついてくる生徒もいた。(津田)
⇒逆にサッカーから国際理解とか歴史とかに広げていくとか,調べ学習の題材としては取り上げるのも面白いのでは?自分たちの主張,意見をつくるのには向かないかもしれませんが。10班ともサッカーでも,サッカーの何を調べるのか,深められる視点を設定していった方が,生徒のやる気を引き出す方向にもっていきやすいのではないでしょうか?「ただサッカーを発表します」だけではなく,そこから絞り込ます教師の投げかけがあればいいのでは?(飯田:四条畷学園)
Q:それではサッカーでどんなテーマが考えられますか?(長尾)
・ボールができるまで。
・昔は何を蹴っていたんでしょう?
・実況中継の比較
・ホストになった村と国との関わり
・ユニホームの色やJリーグのチーム名についてとか
・他のスポーツ(野球)との比較。今時のお父さんは?
・文化交流としてのサッカー
・蹴鞠とどっちが古い?蹴鞠はなんで流行らなかった?
⇒盲導犬を発表した生徒が発表した理由を言ったら,他の生徒から拍手があった。そういう課題に対する思い・こだわりがしっかり伝わっていたのでは?課題を制限するなら掘り下げを考える必要があるけど,しないとするなら,自分の体験として語れる部分がほしい。(長尾)
⇒食品の安全についての発表の生徒は,論理構成がとてもしっかりしていて,結論として「私は食べたくない」という意思表示をしっかりしていて感心した。では,「私はどうしたらいいか?」までもっていくことができれば,総合学習としてもいけるだろう。(奥田:大阪国際)
⇒オーストラリアの中では4班が絵がたくさんあって関心の高さがうかがえた。「自分たちはこう思っていたんだけど・・・」といった物語性があるとひきつけやすい。「〜〜〜を調べてみました」ではじめてしまっていて,「なぜそれを調べたの?」が見えにくい発表が多かった。構成の工夫が必要ではないか。(長尾)
授業時間について
高3ではじめて情報科に取り組んでいる生徒は高2に比べると遅れている部分もある。高2では余裕があると思っていたんですが・・・。「この時間,何やってるのかわからない」といった声も聞かれ焦った。(津田)
Q:すべて操作を覚えてないと指導できない,ではなくて「だいたいでええやん」はすごく面白いと思う。その辺については?(長尾)
⇒ビジネスソフトについてはきっちり知っておかないとという意識もあります。けど,ソフトは何でも目的が決まっている。パワーポイントならプレゼン。逆にいうと,プレゼンはパワーポイントに決まってるわけでもない。「プレゼンテーション技術」の一環としてパワーポイントも指導していけばいいのでは。今日の発表でも,パワーポイントができていても発表ができていない生徒もいた。(津田)
Q:今日のプレゼン自体に対して思うところはないですか?(長尾)
⇒1枚あたりの字が多くなってしまう。作品づくりに意識が向いてしまい,しゃべり方リハーサルにもう少し時間をかけてみては?書いてあると安心して読まずにすぐ次にいってしまう場面もみられた。(村上:精華高校)
⇒インストラクターの視点からみると,こちらのに正面向いてきちんと話をしているのは1組しかなかった。プレゼンテーションの本当のねらいは何?壁新聞でも別によかったのかもしれない。枚数とか効果は使わないとか,そういうルールを設定しておく必要があるのでは。導入の時点ですべての効果をみせてしまわないで,伝え方を重視してみてもいいのではないか?(阿比留:キャリアリンク)
Q:これからの流れ。今回のこの発表を今後どう変えていけるのか。(宮浦:須磨学園)
⇒前回みせていただいた時の練習風景をみて,教えなければいけないことがいろいろあるな,と。オーストラリアのことを調べた生徒も前回指摘したことに対して答えを用意していた。誰に対して何を思ってもらいたいのか。指導のポイントをきっちりおさえることでこの1週間で変わったチームもいくつかあった。(奥野:キャリアリンク)
Q:情報の授業での「プレゼンテーション」力を鍛えるべき?それともパワーポイントを使いこなすことを重視すべき?(長尾)
⇒ほんとはどちらでも重要。プレゼンテーションは要素が多い。情報の授業の中だけですべてをフォローするのは難しい面もあるかもしれない。情報を選びとり,構成していくツールとしてパワーポイントを活用してみてほしい。(市川:信愛女学院)
⇒国語の先生がやっていくべき部分も大きいのでは?テーマを決め,調べ,まとめていくといったものの考え方。他教科との連携を考えた上で,情報科を位置づけたい。先生に対する評価の問題。そのプレゼンが誰を対象に伝わったのか,しっかり評価していく必要がある。(奥田)
⇒誰のためにプレゼンをするのか。ほんとうに対象を考えた文脈づくりをしてもいいのでは?たとえば学校紹介をして,参観に来られた先生方にあとでどのくらい伝わっているのかテストをするとか。(稲垣)
⇒課題に取り組んだ最初の時点では対象が明確でなかった部分もありました。直前に奥野さん(=プレゼンのプロという設定)に見てもらったところがすごく刺激になっていた。(津田)
⇒小学生のプレゼンの授業をみてきたんですが,集めて,調べてきたことをたった3枚に集約していた。結論,みたこと,自分たちにできること。1枚1枚つくってはチェックして発表の練習をしてた。小学校,高校に限った話ではないし,学年をこえた系統性を考えることも必要になってくるのでは(吉澤)
⇒聞く人が何に驚くかわからない。オーディエンスの反応からグレードアップしていくような繰り返しは必要だと思う。それと,「プレゼン上の文字を読ませてはいけない」演出上「読ませよう」とする部分と,しゃべりながらまとめとしてプレゼンを使うやり方とは対照的だった。(長尾)
グループ分け
Q:1人1人つくってつなぎあわせるのは難しいのでは?(長尾)
⇒しゃべったこともない子も含めて機械的にグループ分けした。それも1つの出会いの場面として活かしたい。4人組ませてみると「この子のを中心にしてやろう」といった場面もあった。そういうこともあってまずは1人1人つくり,それを持ち寄ることを考えた。選択の時間なので,いくつかのクラスが集まっていることも考慮した。(大野)
⇒リスニングの時間などは知らない子どうしで組ませると面白いことがある(米田:羽衣学園)
⇒現代っ子は知らない場でのコミュニケーションが苦手。知らない子で組ませるのも大事では(吉澤)
Q:評価とグループ分けの関連は?役割分担をもたせることもできたのでは?(長尾)
⇒グループを組んで1つのものをつくった時に,何もしていない子がでてしまうのが困る。個人の作品も評価することを指示しておいた。(大野)
評価について
Q:津田先生のおっしゃるように「楽しい教科として評価を緩く?」という部分と「評価は評価としてしっかりやるべきだ」みなさんはどちらの考えに近いですか?(長尾)
⇒その場その場の適切な言葉がけと自己評価を組み合わせることで納得のいく評価になるのでは?(稲垣)
⇒なんで生徒が評価が嫌いか?承服できないからじゃない?納得できる評価をしていかないと。情報科はいろんな教科にわたる評価観を見直していく突破口になるのでは?ペーパーテストに客観性はあるけど,それは間にトンネルがある。レポートの提出だって誰に向けて書いてるのかわからない。そういった「合格ライン」をイメージした評価ではなく,当事者意識をもった「思いが伝わる」実感を評価していく方向。「再チャレンジしたくなるような評価」(小林:清教学園)
⇒難しいけど絶対評価の基準をしっかり確立していかないといけない。国際社会に対しても。ペーパーは半分くらいであとは形成的,プロセスの評価をしんどくてもやれないか。「相手(評価者)がみえる評価」が大事。それが授業の評価にもつながってくる。(奥田)
⇒絶対評価に二の足を踏んでしまうのは,評価自体の難しさがある。評価しにくい,どうやったら評価できるのか方法を教えてほしい(津田)
⇒評価を具体的にする。生徒自身納得できるように(項目をつくることも含めて)。どこでも通用するものではないかもしれないが,生徒の実態,課題にあわせて観点をつくっていくことが大事なんではないかと。(長尾)
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