第5回公開授業
  
技術・家庭「グループ研究〜手作り弁当を作ろう!」

研究授業
意見交換会

平成14年1月17日(木) 第5・6限
聖母被昇天学院中学校 http://www.assumption.ed.jp/
3年選択生徒
授業者 鹿嶌三和子



研究授業  技術・家庭「グループ研究〜手作り弁当を作ろう!」

指導案(PDF) 

  公開授業キャラバンはじめての中学校。教科は技術・家庭科の選択です。「手作り弁当を作ろう!」がテーマ。「どんなお弁当をつくるか?」「誰にたべてもらうものか?」といったコンセプトをグループごとに決め、冬休みの間に必要な条件(食材、調理器具など)、役割分担などを相談してきたそうです。

 本時はいよいよ調理実習!「ちびっこ大好きだよ弁当」「火星ラブラブ愛妻弁当」など、アイデアあふれるお弁当作りの開始です。と、同時に、後でプレゼンテーションの時間が設定されています。生徒たちは調理しながら「写真とらなきゃ!」とデジカメで記録していきます。グループごとに作る料理はちがいますし、時間配分も大切です。

 


 その一方で、パソコン室では、プレゼンテーション担当の生徒が、パワーポイントを使った作品の仕上げにかかっています。 家庭科室とパソコン室は美術室をはさんですぐ隣。生徒たちはデジカメで撮った調理の様子をパソコン室にもっていってどんどん、プレゼンテーションに取り込んでいきます。

 

 

 制限時間ギリギリまでがんばったグループもありましたが、無事、試食会へ。グループごとにお弁当を並べ、見栄えを比べ、試食をします。見学の先生方も試食。調理中には「間に合うかな?だいじょうぶかな?」と不安だった先生方も、食べてみて納得。立派なお弁当でした。

 パソコン室に移動してプレゼンテーション。グループごとに、お弁当にこめた思いを発表していきます。栄養バランスをレーダーチャートにしてあらわしたり、キャラクターの人形をレイアウトしたり、グループごとにさまざまな工夫をしています。 「彼ピと浜辺でランデブー弁当」グループでは、寸劇をとりいれた発表も。生徒の活き活きした発表に見学の先生方もビックリ。

生徒作品1
生徒作品2

 また、発表を評価するシートも用意されていました。「栄養のバランスは?」「わかりやすく説明できているか」など、お弁当の評価とプレゼンテーションの評価、両面からの項目が用意されていました。家庭科の内容だけでなく、プレゼンテーションをつくる、発表の仕方を工夫するといった情報活用能力にかかわる部分も取り入れた、充実した授業でした。

評価シート(PDF)

 さらに、実は今回の公開授業、見学の先生も参加してみよう!ということで、手塚山学院泉が丘中の辻先生が、「息子に贈るパッパッとできる、パパ弁当」をつくって参加されました。プレゼンテーションは、信愛女学院の長尾先生が担当。生徒にも大好評のコラボレーションでした。

  辻・長尾作品

 


授業者からひとこと

 公開授業後、「他の先生方の反応はどうだった?」「はしゃぎすぎたかな?」と不安に思っていた生徒たちも掲示板の辻先生や長尾先生のメッセージを読んで、安心と自信を持ったようです。

 その後の審査では、各班の差はあまりなく、「自分の班が一番よかった。」と自己満足しているようでした。ちなみに、bクラスの総合評価では、3班(彼氏と浜辺でランデブー弁当)が好評でした。

 生徒の感想文では、『見に来てくださった先生方がいろいろ「おいしそう」とか話しかけてくれてうれしかった。』という声も。他校の先生との接触はとてもよい刺激になったようです。見学に来てくださり、ありがとうございました。

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意見交換会

司会:長尾 尚 先生(信愛女学院)

パネラー: 鹿嶌先生(聖母被昇天学院中)
坂東先生(聖母被昇天学院中)

  
記録:関西大学大学院 稲垣忠

 意見交換会では、授業者の鹿嶌先生、サポートにあたられた坂東先生のコメントを口火に、参加者からさまざまな意見がだされました。今回からの公開キャラバン「第2ステージ」では、授業の中身をもっと掘り下げ、高めあっていけることを目指して取り組んでいます。高校の先生の立場から、中学校の実践をみるのは新鮮な経験となったようです。

授業者からのコメント

  • グループ研究として自分たちで調べ、発表することを活動の中心に据えた。身近で、取り組みやすく、親にはつくってもらっていても、自分ではつくったことがないという弁当作りをテーマにした。
  • 調理とプレゼンテーションにわけたのは、 生徒の得意な部分を活かし、それぞれが活躍できる場を設定したため。 今度は個人個人で調べ・発表するときに、活躍した生徒が、リーダー的な役割を担えるようにしていきたい。
  • のせたらどこまでも行くパワーをもってる生徒たち。うまくのってくれる場面設定ができたかどうか。生徒は 自分のもってる力のちょっと上、120%ぐらいのがんばりをみせられたのではないか?(鹿嶌)

  • 調理に時間がかかり、発表の時間がとれるか心配だったが、うまくいった。 プレゼンのつくりかた・写真の取り込みなどは、家庭科の時間内に学習してきた。
  • プレゼンテーションの流れ・構成は教師が大枠を準備。班によっては授業後も準備していた。それでも、今日の授業時間内に、調理中の写真をいれるなど、最後まで修正をがんばっていた。(坂東)

本時の授業から

  • 生徒の多様な表現力・多彩なアイデアに驚いた。学力低下が話題になっているが、そういう見方ではなく、今までの子どもには見られなかったところ、子どもの変化を見ていく必要があることを実感した(辻)
  • 授業が終わったあと、生徒の表情がスッキリしていたのがいい。拘束されていた授業ではなく、思い切った表現をした充実感を味わえているのがいい(長尾)
  • 事前の調べにはネットの活用だけでなく、お母さんに聞いてきたというエピソードはよかった。また、プレゼンテーションをつくることで、栄養バランス、問題意識をより認識する場面となったのでは?(市川:信愛女学院 )
  • とにかくボルテージの高い授業でした。生徒の印象にも残るいい授業だったのではないか。(小林:清教学園)
  • 事前に公開されていた指導案をみて、弁当とプレゼンテーションになんの関係があるのかなぁ?と思っていた。実際に授業をみて、またちがうイメージをもてた。著作権の扱いが難しい(飯田:四条畷学園)
  • 手をつかい、機械はつかわないというのが家庭科のよくあるパターンだが、記録手段としてデジタルカメラはとても役に立つと思った。あと、男の子がいると調理実習でもけっこう雰囲気ちがいます。(若月:東海大仰星)

高校とのつながり・個人差への対応

Q:中学の技術家庭で、どうit関連をカリキュラムに位置づけているか?(津田:大阪薫英女学院)
去年の9月につくられた新pc室。情報教育はそれ以降にはじめた。 パワーポイントは、授業で若干とりあげた程度。生徒は、フォントの変え方や音の入れ方など、口コミでどんどん使い方を工夫してくる。 順序だてて教える必要性はそれほど感じなかった。(坂東)
得意な子が得意なことを発揮できる場をつくるvs一斉に教え込み うまく前者を設定できれば、瞬く間にリテラシは広がってくれるのでは?(長尾)
家庭の影響か、出来る子とそうでない子の差が広がってきている。今まで、白紙の状態の生徒にゼロから教えていたのが、中学校でどんなことを学んでくるのか?スパイラルに質を高めていきたい。もっと中学校の授業の実態を知っておく必要性を感じた。(川崎:飛翔館高校)
中学校の子どもの意欲・スピードはすごい。アンケートでも、個人差の対応が問題になっていた。操作の部分だけに注目していては、授業が成り立たなくなってきている(長尾)。
個人差が大きいと、一斉指導は難しい。出来てる子が飽きてしまう。そういう子が指導的な立場になられるような場面設定を考えて工夫している。(佐竹:清教学園)
中学では2年生を担任し、高校でも指導しているが、中高では、中学の方がレベルが高い印象。小学校で学習してきた子が中学にあがってきた。キーボードに抵抗はない。高校ではシスアドの資格を目標にする生徒もいるが、全然、使えない生徒もいる。(坂東)

各校の取り組み・現状

  • 高校家庭科を担当。情報科と家庭科との関連が悩み。家庭科では、プレゼンをしたり、栄養計算、調べ学習にインターネットを使ったりしている。生徒は指示しなくてもやってくれるが、スキル差はある。「技術を深める」だけでなく、頭で考える・「中身」をどう高校生らしく深められるかを考えていきたい。(竹安:箕面高校)
    ノウハウだけではできなくなってきしまう。考える力を育てる場面をどうカリキュラムの中に位置づけていくか(長尾)
  • 女子高なので、技術家庭で技術に関する部分はほどんどやってこなかった。ようやく中高にもpc室ができ、活用の仕方を考えている。2学期に知識・スキルを指導し、3学期に評価のしにくい活動的な単元を実施している。卒業アルバムと結びつけ、ホームページづくりやプレゼンテーションにチャレンジする予定。家庭科で情報を指導したはずみで高校情報科も担当させられそうな状況。(森本:堺女子)
  • 高槻では、小学校低学年でお絵かき、中学年でイントラグループウェア、高学年では外での調べに活用。10年前で中学てやっていたことと、そんなに差は感じない。壁新聞がパワーポイントになっただけでは。ただ、情報モラルの指導はきっちりしていく必要性を感じている(大峠:茨木擁護)
  • 次回は中学技術家庭科。2時間のうち前半は国語と連携。1年かけてのレポート「考えるレポート」の要約をつくってプレゼンをやる授業を。後半は、メールを活用したコミュニケーション重視の授業。情報をどう伝えるかが大事。班にわかれてwebで調べたことをどうシェア・分担するか?をゲーム感覚でチャレンジします(小林:清教学園)

 


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