村上先生
今日は予定を変更して昼食をとらずに始めさせていただきます。
では授業を実施された先生から授業の狙いを説明していただきます。
藤井先生
大学のゼミ等で発表した時のレジュメを配布させていただきました。
3年前に実施した時のものをまとめたものです。
基本的には起業家教育というものをやっていまして、ビジネスアイデアを考えることから始めたのですが、自分達が考えたものを形にするということ、最終的には社会に返すということを念頭においてやってきました。
環境問題を解決するというテーマで環境破壊であるとか、ごみの問題などを考えるということに取り組んできました。
中学の地理を教えることになり、プロジェクト学習を活用したい。
教員になってすぐのときも宿題で「海外旅行の企画を立てよう」ということをやっていました。
それをプロジェクト型にアレンジしなおしたものが今回のものです。
宿題としてインプットしたものをどのようにアウトプットするか。
発表したものをみてよかったね、だけでお仕舞にするのではなく、競争原理を導入しました。
クラスでの予選では全員発表しましたが、順位をつけて本戦に臨みました。
自分達が考えたいろんな表現を、みなさんに評価してもらい、自分でも評価するというのが大まかな狙いです。
社会科の授業なので、国や文化について調べるというのもあるのですが、プロジェクト型にしている理由は以上のようなものです。
村上先生
プロジェクト型学習をわかりやすくいうとどんなものでしょう?
藤井先生
今回は旅行会社というチームを組んでプロジェクトを行うというものです。
テーマは海外旅行を売り込む、ということです。
社会に対してアクションを起こす、というところまでいくのがプロジェクト型学習です。
学校の中だけで完結するのではなく、外に向かって発信する、そして社会を変えることを目標にしている、という風に私はとらえています。
村上先生
全体の流れを紹介していただけますか?
藤井先生
学習活動の流れとしてまとめていますが、1学期の終わりに宿題としてイントロダクションを行いました。
その後旅行企画書、ポスターの作成を行いました。
他の人がみてわかりやすく仕上げるよう指導しました。
まずメインテーマを決めなさい、そしてキャッチフレーズを決めなさい、そしてその説明を書かせました。
メインの国は基本1つなのですが、しっかりと調べる国を決めて作業しなさい、と指示しました。
しかし、行きたい国を選ぶところからまず生徒は悩んでいます。
両親の新婚旅行の国だから選んだ、とかシャーロックホームズが好きだったり、ハリーポッターが好きだったりでイギリスを選んだ生徒もいます。
旅行企画の場合は個人に選ばせるので国が偏り、構造や背景、社会問題について学べないとの指摘がありましたが、歴史なども調べるよう指示しています。
生徒たち主体の学習なので、ばらつきはありますが、自分が選んでいるので、教科書に載っているようなことは調べています。それ以上のことを調べているのがほとんどです。
旅程表には、すでに時差について学んでいるので計算させています。
観光案内は5箇所以上ということですが、はまればはまるほどいろんなところを調べてきます。
ありきたりのものばかりではお客さんは選んでくれないよね、でも王道は押さえておかないとマニアしか来ないよね…と揺さぶっています。
みやげ物や食事もこだわっている部分で、家族や知人に持って帰ると喜ばれる、相手の顔を想定して選ぶように指導しています。
特産品を調べなさい、ということではありません。
「誰が」というところを大事にしています。
為替レートも換算させています。
外国のお金と日本のお金が違う、ということに気づいてもらいたいです。
売り出し価格も調べさせています。
パックツアーと自分達が合算したものを足していくと値段が明らかに違う。
そこに気づいてもらいたいと思ってやらせています。
旅行会社のツアーと比べての驚きが大事だと思っています。
消費者として、値段が決まるからくりに気づいてもらいたいと思います。
パンフレットとポスターを宿題として2学期に提出させ、お互いに評価・コメントを書かせて、3人に評価してもらった用紙をもらいます。
その後、自分が評価した時と同じ評価基準で自分の作品を評価しなさい、と指示します。
やっぱり自己評価と客観的な評価は違うので、一回他人のものを評価した後自己評価させます。
もちろん平常点はこちらで別に点数化しています。
次は1分間プレゼンです。
ポスターをもって、内容を売り込みなさいというのをやります。
400字詰め1枚の発表をクラス予選として5名選び、文化祭にクラス代表が発表します。
グループを作るときは代表5名は社長になります。
それ以外は社長になりたい人がなろう、という風に指示します。
1チーム5名なので、25名の「就職先」はあるが、それ以外のメンバーは「就職浪人」として扱うことで、社会のしくみを考えさせます。
そこで社長になりたい人は求人票を、雇われたい人はエントリーシートを書かせます。
その後面接タイムをやります。
最初から仲良しグループでやるのではなく、自分は何ができるのか、他の人に何を求めるのか、ということを考えさせたい
ちゃんと人から評価されるものを持っているのかどうか、というところに視点を持たせたいと思っています。
キャリア教育の面もあります。
人に評価してもらうということはどういうことか、というのを体験してもらいたい。
グループは5人までにするよう最後まで指導します。
企画は社長が持っているプランを出すということにしています。
グループはCMの絵コンテ、ロゴマーク、プレゼンを作らないといけませんので、それぞれの責任者を決めて、社長は全ての仕事に気を配って期限までに仕上がるように、ということを指導しています。
関係者のインタビューは今年はできませんでした。
作ったものを見せて聞いてみなさいという活動なのですが、やれませんでした。
海外の留学生とのワークショップもできませんでした。
そしてプレゼン大会になります。
お互いの評価、要は給料なのですが、今までの自分の仕事を評価させます。
感想も資料にしていますのでまたご覧ください。
村上先生
学校関係者と企業関係者の方がいらっしゃるので、所属とお名前を言っていただいて一言感想などお願いします。
平井さん
いつも呼んでいただいて、授業をしたりもしました。
実際に映像制作の授業をさせて欲しいとお願いしています。
奥田先生
研究会顧問の奥田です。
今はチーム学習を中高でもやってみようということをテーマにしていますが実際にみることができて参考になりました。
さまざまな年齢で実践されているようですが、内容に違いはありますか?
藤井先生
かつてやってきた事例をまとめましたが、今やっていないものもあります。
「会社を作ろう」は公民分野でやっています。
奥田先生
社会科の内容を総合的に鍛えていく趣旨なんですね。
個人で作る場合と、チームで作業させる時の工夫はありますか?
藤井先生
最初からグループにすると何もしない生徒がいますので、まず個人でしっかり作らせるようにします。
最近教科書も調べ学習が主流になっていますのでそれを個人で行う。
グループの中ではなかなか軋轢があるようで、発表の時もありましたが、チームにすると中身も濃くなりますが、人間教育的な部分もありますし、1人では苦手な部分も、チームなら他のメンバーにやってもらって、自分は得意なことで貢献するのが大事だと思います。
友達でもすごいなぁ、というところを発見できます。
能力を発揮したり、仲良くなったりできるので、教科の意義とは違いますがいいところだと思います。
奥田先生
普通の授業との違いをどのようにとらえていますか?
準備や手間などが余計に掛かると思うのですが。
藤井先生
そのままでも勉強する子は知識を与えていけばいいのですが、苦手と思っている生徒はプロジェクト型のほうがいいと思います。
教科書で取り上げている国でやってしまうと、似たり寄ったりになってしまう。
調べたり、体験して学ぶということや、自分が選んだ、ということに対する興味は別です。
ただ、テストには出題できないですね。
奥田先生
中1で自らやっていく姿勢があれば、こういう形の授業を増やした方がいいと思います。
チーム学習が増えていくことが理想です。
社会ではできますが、数学などでできるかというと話は違いますが。
ぜひまねしたいと思います。
田中先生
上宮の田中と申します。
大学院を出た後旅行会社に勤務したこともあるので興味を持って見させてもらいました。
中学なので社会という授業ですよね。
授業とプレゼンの準備の比重はどんなものでしょうか?
藤井先生
4回は発表の準備です。
それ以外は普通の授業です。
グループにして行ったのは3学期に入ってからです。
2学期の最後にグループを作って休みの間に作業させておきました。
空いたときにコンピュータ教室を使わせてもらったりしましたが、授業以外では放課後にやっていました。
クラスごとに希望者を募ってやってきました。
田中先生
パワーポイントのスキルは?
村上先生
連係プレイで教えています。
そんなに難しいことは教えていません。
奥田先生
以前に比べて生徒のスキルはどうですか?
藤井先生
スキルは変わっていないと思いますが、今までの優秀作を見せているので、その分が違うと思います。
授業でやっているのは2時間ですが、興味がある子はどんどんやっていくので、出来栄えがよくなっていると思います。
田中先生
プレゼンというより発表という感じがしたのですが、プレゼンのスキルを教えましたか?
村上先生
私の授業でも発表させたのですが、そのとき基本的な部分は紹介しました。
田中先生
プラカードの使用などは?
村上先生
教えてないです。
藤井先生
お客さんの心を掴まなければならないので、今までの作品を紹介しました。
クラス予選ではいろいろやっているのですが、生徒の評価は意外とシビアで、ちゃんとまとまっているものが本戦に上がってきます。
漫才のような発表をしているグループもあるのですが…。
プラカードを使った班は最初からそうでしたね。
後から自分で気づいたほうが学びになると思います。
教師が教えるよりも、同級生がやっていることを見たほうが力になると思います。
ヒントは与えますが、教えるということはしません。
解説も特にしません。
それでも、感想にはいろいろ書いているので気づいているんだと思います。
宮村さん
帝国書院の宮村です。
調べ学習は下手にすると盛り下がるので敬遠されているのですが、盛り上がるいい例を見せてもらったと思います。
実際に売り込め、とか情報機器を使え、となると生徒が生き生きとして取り組んでいました。
指導要領が変わって調べ学習がほとんどなくなるのですが、路線は継承されるのでしょうか?
それと日本の地理はどのようにされていますか?
藤井先生
もちろん続けていきます。
言葉と体験を重視してやっていきます。
日本地理は担当教員が別なので、従来の授業が多いです。
ですが、フィールドワークを行いますので体験型学習はあります。
プロジェクト学習にはなっていないと思います。
歴史分野はかなり難しいと思います。
歴史を担当したらどうしようか思案しています。
・チームのつくり方は、個人作成のポスターやロゴ、CM絵コンテ等の総合評価で上位5人と他に自主的に社長をやりたい人で社長を決め、その後4−5人のグループ/チームを組ませる。トラブル場合もあるがガタガタするが最後は治まる。
・作品のスキルや指導はどの程度されているのか?殆んどせず、先輩の良い作品を見せたり、聞きに来た時にヒントや操作法をアドバイスする。
・来年度、動画を教材に考えているが、撮影の技術等は専門家に指導してもらえるか?(かやの平井さんはプロデューサーで、その場合は専門家に依頼)
・シチズンシップ(市民教育)とチーム学習(プロジェクト学習)に興味を持っているが、取り入れられているか?社会科では公民的な資質の育成が基本であり、以前から企業教育→キャリア教育、シチズンシップ教育を入れている。歴史には体験的学習は入れ難い。
・6年教育についてのプログラムは有りますか?まだ確立していないが、体験的学習やシュミレーション、ゲームなどを取り入れている。
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