第46回公開授業

座学と実習(タグ打ちでつくるWeb制作)
研究授業
意見交換会
平成18年10月2日(火)
四條畷学園高等学校

授業者 飯田 英佳



研究授業

 5限 教科書(日本文教出版)P.52,53の「情報の信頼性と責任」の座学。 

 6限 2学期の実習作品となるタグ打ちで作るWeb制作の実習

 

 今回の授業公開キャラバンは、46回目です。第1回を四條畷学園高等学校の飯田先生が行って以来、5年が経過しました。44回実施し、5年を経て、最初の開催地・授業担当者に戻ってきました。その間、たくさんの方々に参加していただき、支えていただきましたことを、深く感謝しています。

  

座学の配布プリント(PDFファイル)

授業風景
◆5限 まず、ホームページ作成のための構想を考えます。
3ページのWeb制作を、昨年度の先輩の作品などを参考にして考えます。
操作などで困るとすぐに助手の先生がかけつけて
丁寧に指導して下さいます。
この教室のモニターは,机の中に格納できます。レバーを手前に引くとモニターごと下に降りていきます。ふたをすれば,机の上で楽に作業ができます。
「情報の信頼性と責任」についての教科書の説明と配布プリントへの
書き込みをします。
テキストは,教科書会社の提供するデジタル教材を大きく映し出して
提示します。
「情報モラル」のWebページから、コンピュータウィルス・ネット詐欺など
の仮想体験をさせます。
ウィルスやネット詐欺のシミュレーション画面を見る生徒は,
真剣な表情でした。
キーボードも机の中にしまいこめるタイプです。ノートや教科書を広げるとどうしても場所をとってしまいます。

◆6限 先週までに入力したタグを画面に表示し、それらのタグの確認をします。
新しいタグを画面で説明。 自分で入力して、画面でその通り表示されるか確認します。
タグの解説をしながら生徒に作業をさせていきます。1年生ということもあってキーボード入力のスピードには,まだ個人差があるようです。
参加者もHTMLという言語を使ってのホームページ作成に熱心に聞き入っていました。
 
意見交換会
 
司会進行: 長尾先生(大阪信愛女学院短大)

  

高山教頭先生(四條畷学園)
教員も一人一台PCの貸与を受けています。生徒と同様にPC利用に関して,情報担当の先生方から叱られながらもだんだん使えるようになってきています。学校の情報化は,学園あげて力をいれています。例えば,外部の学校説明会では、パワーポイントを使ってプレゼンテーションをする必要性に迫られて始めています。いまは大学でも、知識ばかりの学生よりも、グループで活動し力を発揮できる学生が求められる状況ですから。
4年ほど前に自分のクラスの生徒が,この私学のプレゼン甲子園に参加しました。その学生は,今でも非常に頑張って情報機器の活用をしているようです。

◆長尾先生
2001年9月からスタートしたキャラバン。飯田先生は、その参加者の中でも有用な情報を所属校に持ち帰って実現してきた筆頭だと思います。私学の情報化推進指定校にもなって実績をあげています。

さて、教員は一人一台をもらって、反応はどうですか?

◆高山先生
連絡手段としての活用、また、生徒の「いいとこ見つけ」のような活動、と利用しているが、スキル面でのハードルがまだあると感じています。クラスの日直が,クラスの状況などを書き込んだり,連絡を記録してクラスの生徒に伝えるなどもしています。

会議の短縮化を試みていますが、なかなか思うようにいかないですね。事前に案を提示してもらうようにグループウェアを使って回覧していますが,十分な書き込みがないケースが多いです。どうしても近くにいる先生とは,口で話した方が,手っ取り早いというような意識があるためだろうと思われます。従って,相変わらず会議時間は従来どおりになることがまだ多いです。

◆奥田先生(大阪国際大和田)
大阪国際大和田中高では,簡単な掲示板を入れてこの9月から使っています。朝礼での連絡程度は、前日に入れておいて、という習慣づけはできたが、今後の展開が問題。少しでも口頭での連絡時間を減らしたいと考えているところです。

飯田先生
「e-スクール」というグループウェアで出退勤から管理しています。朝、出勤したら、PCの電源を入れ、それで出勤がチェックされます。出張にでかけている先生もこれで簡単に把握できるしくみになっています。また校務分掌,学年団,教科,といった同じ仕事や目的をもつ先生のワークグループを組んで,情報交換がスムーズに行くようにしていますが・・・。幼稚園から小中高短大や法人事務局でも,共通に利用しています。

長尾先生
情報化によって,業務の簡素化、短縮化が進み,教員同士の生のコミュニケーションに時間が当てられるというのが、目標の一つでしょうが、情報化の恩恵を先生方が,感じてくれないとなかなか利用してもらえないですね。

飯田先生
グループウェアの回覧機能、例えば、学校見学会がある時、その任務に関係する人に対してのみ連絡を上げます。見た人はチェックをします。チェック済み者と未チェック者との一覧が見える状況で、把握がしやすいです。事務も出勤簿の集計が瞬時にできるようになって,業務が軽減されています。

奥田先生
書き込みや消去の権限設定はどうしていますか?

飯田先生
幼小中高短大事務局と管理者を1名指名して、その人が設定をしています。また、施設予約はよく利用されていて、会議室,体育館などは,学園全体で利用しているので,早くから予約が入ることになりますが,利用状況がすぐに把握できるので便利です。どうしてもバッティングしたときは直接調整がひつようですが・・・。でも以前は,管理担当の先生に電話で問い合わせていたので大変でした。

長尾先生
岐阜の井上志朗先生のところでは、会議ではプレゼンをしなければならないらしい。連絡は基本的にメールや掲示板を利用。いちいち,会議を連絡の時間に使うということはしない。話し合いの必要性があるときのみ会議をもつというのが、井上流。これで時間ばかりかかる会議は激減したということです。

笹谷先生(相愛)
四條畷さんの取り組みが,実に羨ましいです。会議では,その場での思いつきで発言する人が多かったりすると、むやみに長引くこともあります。予め審議事項などが整理されていると、スムーズに進行できますね。

小林先生(清教学園ICTコーディネータ)
清教学園では、グループウェアの利用は、まだインフラの方が整っておらずに公式化していません。教員からは,早くしてくれといわれていますが、管理者側の準備不十分で,待たせてしまっているような状態です。使っている先生方は,当たり前のように使っておられます。本当は,便利になったことを明言してもらえると嬉しいし,普及もすすむでしょうが、むしろ利用を拒んでいる先生方が,声高にマイナスな意見を表明されることが多いです。でも実際には,便利だと感じて黙って利用してくれている教員の方が,多くいるように感じています。

奥田先生
そのe−スクールというグループウェアは、この四條畷学園用にカスタマイズがかなり必要だったのでしょうか?

飯田先生
それは殆どありません。できあいのままを使っていて,ほとんど問題はないですね。特に業者に変更を依頼したことはない。幼稚園から短大・大学で全部署で利用しています。生徒のグループウェアも使っています。そちらでは、校長先生が毎日メッセージを上げてくれています。クラスの係の生徒が,それを読み上げています。この生徒用のグループウェアは、中学校では、出欠管理ができるので重宝しています。高校では、うちの学校の教務処理方法では,例えば朝礼に出てなったときも遅刻あつかいにし,授業の遅刻だけを単純に集計するのでないために,残念ながら対応できないので、出欠管理は使っていません。

今井先生(明浄学院)
明浄でも早くから教員一人一台にPCを貸与してきました。しかし電子会議で、どの程度の情報を予め流すのかに悩んだりしています。流しても無視されたり、デジタル化の必要性などないと反論したり、などなど。利用方法に検討の余地がある状況です。

奥田先生
PCで作業しなければ補助金が申請できないとか、校内での通常業務に支障が生じるとか、そういった「必要に迫られる」という状況があれば進むと思います。私学も,文科省が私学課からの連絡が,メールで入るようになり,メールで返信することになって以来,大幅に事務の情報化が促進された経緯があります。

板倉さん(日本文教出版)
企業でもやはり使う人,使わない人が混在している状況です。企業の場合には,トップダウンで進めば、心理的抵抗があっても従わざるを得ないですね。

海野さん(日本文教出版)
抵抗があるにはあるが、徹底していないのも事実です。中間の年齢層の人のなかには,利用に抵抗のある人もいます。若い人の利用は多いですね。

小林さん(富士通FIP)
社内ではグループウェアを使って情報通信をするのが標準で、どんな些細なことでもグループウェアに書かねばならないので、面倒に感じるときもあるほどです。ただ、上司の中には殆ど見ない人もいるので、そういった人には、留守電をいれたりなどの別対応をしています。

岡田さん(大阪ウチダシステム)
うちでもグループウェアでの情報共有は基本です。カタログなども現在では,ウェブの利用になっています。従って,仕事には,情報化は,なくてはならないものになっている状況です。しかしこの四條畷学園での情報化は、飯田先生がおられてこそはじめて形になって現れているのであり、非常に素晴らしいと思います。

長尾先生
情報化をすることでペーパレスは進みますか?

岡田さん
少々は進んでいます。ただカタログの打ち出しなども時々必要になるが,カラープリンタが不足しているというのが現場の状況です。

池本さん(カシオ計算機)
指示系統も含めてやはりグループウェアの利用は必須になっています。

長尾先生
岐阜の井上先生は、はじめに「情報は,自然に届くものではなくて,自分で取りに行くものである」ということを教員たちに徹底したそうです。そして、やるからには紙は廃して徹底的にデジタルで行こうと。情報は,一元化しておく必要があると言われていたのは,印象的ですね。

学校全体の情報化の話をしてきましたが,普通教室などの環境整備について何かありますか。

飯田先生
いま短大の新校舎で新たなコンピュータルームを準備中です。Windowsビスタが発売されるのを待っていて,まだPCは購入していません。また、高校も新校舎を建てますが、ホワイトボードか黒板かという議論がありますが、多数決でどうやら黒板になりそうな感じです。教室でPCを持ち込みプロジェクタを使う場合には,黒板は,ホコリがでるので利用したくない。それから,もしプロジェクタを各教室に設置しても、その使用頻度がどのくらいになるか不安材料はあります。また、動画をファイルサーバに置きたいのですが、まだできていません。

長尾先生
最近,タブレットPCを授業で使うことがあります。手書き文字のOCR認識精度が高くなっているので便利です。黒板がわりに使えます。タブレットPCが,コンパクトである点,それからスタンバイにしておいてもっていけるメリットがありますね。教室でプロジェクタに繋ぐか,そのうちに無線でプロジェクタに接続できるようになれば,教室内で動きながら提示と板書ができる、というような使い方ができたら有効性が高いと考えています。

神守さん(大阪電気通信大学:情報科の免許を目指して教職課程を履修中)
どの程度まで,HTMLを教えたらよいのかに関心があり、このキャラバンに初めて参加しました。授業を参観していて,キーボードの利用になれていない生徒さんが,いたが,キーボードの学習時間は,とっているのですか?

飯田先生
ウェブにあるキーボード練習ソフトなどを利用して,授業の最初に10分程度,学習させることなどを取り入れています。またそれを評価の一部にしています。ネット上のe-typingというのがそのWebです。これのアカウントを取って練習するようにしています。学期に一回は、練習回数をチェックするようにしています。

神守さん
HTMLのタグはどこまで教える予定ですか?

飯田先生
プリントにある通り、この程度までです。言語としての有効性を教えることがねらいの一つです。

笹谷先生
今はWeb作成はやっていません。一般にはブログなどがあるし…。どのようにメディアを使い分けていくかが問題であると思います。

西田先生(近畿大学附属)
飯田先生とほぼ同じ内容でやっています。ただ、タグを教えることについては、そもそも文書構造を示すものであるという観点からすれば、作るだけという授業に意味があるのかどうか、はなはだ疑問を抱きながらやっています。

 

赤澤さん(日本文教出版)
教科書では、タグを載せているが、あまり深追いしないようにしつつ、…。タグを教えた後にテストで確認するとかはするんでしょうか?

市川先生(大阪信愛女学院短大)
いろいろな見方があると思いますが、HTMLを教える意義の一つに「標準化」の重要性を知るということがあります。一方で、世間一般のWebでは技巧はどんどん高度になってきていて、タグの学習ではとうてい追いつかない水準になっています。だから、タグを教える意義はむしろ限定して考えるのがよいのではないかでしょうか。大学のレベルでは,かなり高度なことを扱っています。

長尾先生
HTMLのLが,言語であることを生徒はわかっていないですね。タグが単なる記号ではなく、英語から来た略号であることの認識ができていないですね。コンピュータが解釈するルール…。あれが,日本語化されているならば,言語を使ってパソコンに命令していることがわかりやすいかもしれないですね。

市川先生
日本語を使えるプログラミング言語は他にはありますが…。タグを入力しなくても、アイコンボタンになっていて,<改行>を選べば,br が入るようになっているフリーソフトもあります。エクセルの関数で,命令を教えるような感じで、入力する方法もあります。

福山先生(元大阪信愛女学院)
文化祭の写真を見せてからウェブ作成に移るという導入の仕方が、生徒の意欲を刺激する手法と見受けました。飯田先生が,よく工夫して授業をされていることがわかって,今日は,参加させてもらって役立ちました。

屋敷さん(カシオ計算機)
インターネットの発信の方法として、Web作成をするのは意味があると思います。自分はmixiを利用しています。

笹谷先生
11月23日には,相愛高校にて,私が授業公開をさせて頂きます。プレゼンテーションの発表会の形で実施する予定です。是非ともご参加下さい。

長尾先生
授業をして下さった飯田先生,会場を提供して下さった高山教頭先生,本日は,誠に有難うございました。

 


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