第44回公開授業

初等教育学科1回生 「情報機器演習」
(教職必修科目)

園内に掲示できる
教育的標語ポスター制作
研究授業
意見交換会
平成18年7月14日(金)
大阪信愛女学院短期大学・初等教育学科
5限 (16時10分〜17時40分)
授業者 長尾 尚先生



研究授業

 5限 園内に掲示できる教育的標語ポスター制作 
   
−オリジナル・イラストを使って,教育的な標語(言葉・呼びかけ等)の入ったポスターを作る−

 

 今回公開された授業には、小学校教諭を目指す「児童教育コース」の学生が10名程度,幼稚園教諭や保育士を目指す 「幼児教育コース」の学生が20名程度学んでいました。授業では,誰もが利用する文章作成ソフト(Microsoft Word)を使って,将来,保育現場で必要になると予想される教材制作を行っていました。さらに「学生同士が誰とでも相談し合える環境作り」を考えて,座席配置も毎回変えるといったことを実践されています。
   

講義中の様子
     

 今回の課題は、学生自身が制作したオリジナルのイラストを用いて教育的な標語(言葉・呼びかけ等)の入ったポスター(A4横)を作るというものです。前回までの授業で,8つのグループに分かれて種類の異なるイラスト作成をされています。(表情・野菜・果物・動物・生物・花・日用品・衣料など)一人が2つ以上作成して提出されたイラストは,ファイル名にアサガオとか,ウサギ,といった名前がつけてあり,全員が相互に自由に利用できるように共有フォルダーに入れてあります。今回は,そこから自由に選んだイラストを5つ以上用いて,各自が考えたポスター作成に取り掛かるという内容でした。ここにもネットワークを活用して「学生同士が協調して作業を進められる環境」が用意されていました。
 
授業風景
授業の最初に前回までの作業内容の確認と本日実施するポスター制作についての説明をスライド(PowerPoint)を用いて簡単に行いました。
講義の前半では,前回からの続きでポスターに使うオリジナルイラスト制作を継続して行っていました。
基本的には,一人が2つ以上のイラストを作ることを目標に作成に取り組んでいました。
ポスターに利用できそうな様々なジャンルのオリジナルイラストが,次々にできあがっていきます。
自分のフォルダーに保存した後に,ファイル名を変更して提出フォルダーに入れていきます。
絵を描くことが苦手な学生でもパソコンを活用することで,ある程度のイラストなら描けるようにという配慮から,ペイントソフトを利用せずにワードのオートシェープなど図形ソフトの組み合わせだけでオリジナルのイラストを上手に仕上げていました。
パソコンを上手く利用すれば,(1)相互に情報を共有したり,(2)あるレベルまでの作業であれば,誰にでも可能になる,
といったことを体験させる内容が盛り込まれていました。
講義の後半では,それまでに仕上げたオリジナルイラストを使ってのポスター作成が始まりました。
まずは,予め考えてきた教育用標語の入ったポスターの下書き用紙を,隣同士で見せ合ってお互いにアドバイスをするように指導されていました。
長尾先生から,「本日は,高校の情報の先生がたくさん参加されているので,是非,その先生方からも下書きについてアドバイスをもらって下さい。」との指示がありました。学生同士だけでなく,他の人から多様なコメントをもらうことの重要性に気づいて欲しいということのようでした。
先生方も立ち上がって学生の下書きを覗き込んでコメントをされていました。
工夫が読み取れる作品には,積極的にプラスのコメントをされていました。
ポスター制作は,まだまだ続きそうだったので,本日の授業の終わりに、これまで先輩が作成した作品を提示されました。
学生からは,「うまい!」「かわいい!」などのコメントが,あちらこちらから飛び出していました。
しかし単に先輩の作品を幾つか鑑賞するのではなく,長尾先生からは,次のようなコメントがなされました。
「ただイラストを選んできて画面に並べるだけでなく,どうしたらより見易く理解してもらえるポスターができるのかを考えましょう」
少し時間を置いた後に先生みずからが,作品に手を加えます。例えば,「並列した数種類のイラストの背面に色のついた楕円を書くことで,イラストに統一感を持たせることができます。」他にも「野菜の顔(視線)を中心方向に向けることで,ポスターが落ち着いてきます。」このような作業例示を行うと,学生の中から「前とイメージがぜんぜん違って見える!」という率直な意見がでていました。
最後に確実にファイルを保存して,元気よく終わりの挨拶をしました。
作業を終えて机の上のキーボードやマウスをきちんと整理整頓する学生の姿がとても印象的でした。
保育者になった時には,是非,この授業で学んだ実践力を活かして欲しいものです。
 
意見交換会
 

司会: 長尾先生(大阪信愛女学院短大)
記録: 伊美先生(大阪国際滝井)

高坂先生(副学長):
高等学校の情報関係の先生方が,たくさん参加されましたことに御礼申し上げます。今回は,先生方の研修会を大学のFDの一環としても取りあげて本学教員も参加させて頂き感謝しております。この講義は,学生からも有意義な授業であるとの評判があるので,とても良かったのではないかと思います。

高井先生(人間環境学科長):
このように多くの高校の先生方が参加されていて,FDの講義の質を高める視点でもとても参考になったと考えています。

長尾先生:
第44回授業公開キャラバン実施の許可を大学に願い出たところ,FDの観点から信愛内部の教員にも公開して欲しいとの依頼がありました。今回この授業を公開できたのは, 厚生労働省からどの授業も必ず15回実施するようにとの強い指導があり,たまたま補講授業が金曜午後の時間帯に入ったために可能になりました。ご参加頂き有難うございます。

松本先生:(大阪学院)
今回の課題以外にどのような課題をおこないましたか?

長尾先生:
2人1組になって,園の行事の案内文書を作りました。文章を作るところでいつも戸惑っている様子でした。また「普段の生活と保育者を目指す自分」という題で,短いレポート作成も行いました。この時には日付を入れる位置,文書を出す相手の名前の位置,書き方といった基本的なことを指導しました。

笹谷先生:(相愛)
今回のポスター作りには何時間くらいかかりましたか?

長尾先生:
これまで2回です。1回目はポスターに使うイラスト作成で,今回はそれを使いポスター作りを行いました。今回に限らず小刻みに課題を作成させています。
操作説明は,基本的なことしかしません。ですからわからないことは近くの友達に尋ねるように言っています。それでもなかなか聞かない(聞けない)学生もいます。そのようなことから,なるべく色々な人とコミュニケーションをとるようにと席順は,毎週変えて指定しています。

長尾先生:
先生方の中で,毎週生徒の席順を変えている先生はいらっしゃいますか?

成瀬先生:(京都女子)
毎週変えています。情報の実習の部屋のスクリーンが見えないから毎週変えています。

飯田先生:(四條畷学園)
席順を変えているわけではありませんが,この前ある生徒に「〜さんにノートを返しといて!」と渡しましたが,同じクラスの生徒であるにも関わらず,その生徒が相手の生徒を知らないと言ったのにはびっくりしました。同じグループ内の人とだけしか話していないようですね。

長尾先生:
この授業が今後本当に役に立つのかどうかはわかりませんが,せめて文章作成ソフトであるワードぐらいは使えるようになって欲しいという思いで授業を行っています。園では,ワードぐらいしか入っていないと思いますし。

年度の最後には,お菓子の箱をワードだけで作るということを行っています。オートシェープやワードアートを中心に使います。他には,A4の用紙1枚で,8ページのミニ絵本を作るということもかなり以前に行いました。どちらも完成に近づくにしたがって必死にやろうという姿の学生が見られました。

前回学生と一緒に作ったナスのイラストもオートシェイプの三角形や丸などしか使っていません。要領を把握していない学生の中には,全ての図形を描こうとしている子もいます。そのような学生のため,少し作成してから手を止めさせてコピーや貼り付けの説明をしている。ペイントで描かなくても,ワードである程度細かいこともできますね。パソコンを上手に使えば,ある程度の所までなら同じくらいのことができるようになることや複数人で情報の共有化ができることを体感してほしいと思っています。

松本先生:
できた作品を幼稚園の先生が見るなどの外部からのフィードバックはありますか?

長尾先生:
残念ながらできていません。他の校種の学校との連携も必要ですね。
信愛の内部では,幼稚園のお泊り保育のホームページ作成を小学校の先生がお手伝いしていることはあります。既に5年程度続けていますが,幼稚園の先生方の写真の取り方などがかなり上手くなってきていると思います。メディアリテラシーが付いているのかなぁと思います。期間限定でパスワードを発行して保護者が,写真をダウンロードするサービスを今年初めてやったそうですが,この時期はこのおかげでかなりアクセス数が伸びていたようです。
また小学校の先生が熱心にホームページを作成されていて,ケータイ対応やQRコードをつけておられます。そして修学旅行の速報版を作成されています。そんなページは,学生にも紹介しています。

松本先生:
「もうできたから終わる」といってすぐに終わろうとしてしまう学生には,どのような指導・支援を行っているのか?

長尾先生:
そのような場合には,いい例を見せる(ちょっと手をいれるとガラッと変わる!)と再びやり始めますね。でも,いついい例を見せるか,それが勝負だと思います。それで再びやる気になる学生は多いです。

飯田先生:
今回出されていたパワーポイントの説明資料は学生には配布しているのでしょうか?

長尾先生:
配布はしていません。説明用に提示しただけです。

成瀬先生:
お菓子の箱や絵本などを作っていましたが,モラル教育はどうされていますか?

長尾先生:
まとめてはしていません。折に触れて話をしている程度です。今日の内容なら,イラストは,オリジナルで自分で作ること,作成した情報(イラスト)を共有するという視点で話をしました。

笹谷先生:
幼稚園や保育園といった学校からの要請で,学生が課題を作ることはありますか?

長尾先生:
自分が作ったものが実際にどこかで使われると良いと思いますが,現在のところそのようなことはありません。実際には,そのような依頼はないもののあったかのような想定で,案内掲示物を作るということはやりました。リアルな状況設定は,教育的には有効です。
パワーポイントを活用して実際にプレゼンテーションをさせたいという思いもあります。またホームページの作成も必要かと思います。しかしあまりに多様なことをしても,何をやってきたのかわからなくなる学生がいます。残念ながら1回生時にしか情報の授業がないので,様々なソフトを使うことは難しいのが実情です。なので結果的には,ワードだけで作品を完結させようとしています。

飯田先生:
幼稚園ではパソコンを使ってお遊びとかはありますか?

長尾先生:
園児にパソコンを教えるようなことは,信愛幼稚園ではやっていません。他の園では,あるようです。最近,英語とパソコンの学習は,増えてきているようです。信愛小学校の3年生が,手を引いて幼稚園児をパソコン室に連れてきてパソコンでお絵かきをするといった活動はあります。

津田先生:(薫英) 本研究会副会長の終わりの挨拶
初の短期大学での授業公開キャラバンでしたが,大学で行われている情報教育がこのように高校の先生方にも知って頂けてとても参考になったと思います。これからも継続してどんどんと多様な活動を実践していきたいと考えています。ご参加頂きました先生方,有難うございました。今後もご協力をお願い致します。

 

top   back