第40回公開授業

高校2年 「情報A」
モンタージュ理論の基礎実習
研究授業
意見交換会
年間指導計画
平成18年1月27日(金)
明浄学院高等学校

授業者 野口 仁志先生 今井 隆史先生 (情報)



研究授業

 7限 情報統合実習まとめ・メディアリテラシー  〜モンタージュ理論基礎実習〜

■ メディアリテラシー(モンタージュ理論の基礎実習)■
モンタージュ理論を、簡単に言うと、複数のカット(ショット)の組み合わせで新しい意味を浮かび上がらせる技術のことで、ロシアの映画監督エイゼンシュテイン(1898〜1948)の理論が有名です。このモンタージュ(クレショフ)効果により、より豊かな映像表現を見る側に与えることができます。しかし、また逆に、見る側に容易に誤解を起こさせることもできます。つまり意図的に相手をだますこともできるというわけです。テレビから流れるニュース映像でさえ組み合わせによっては事実とは全く反対のイメージを意図的に与える場合もあります。本授業は、だまされないための知恵を学び映像表現への理解を深めるためのメディアリテラシー授業を目指されています。
 
明浄学院高校の情報科では、2年生の授業の後半に、「情報の統合実習」として「写真などをつなぎ合わせたイメージCM制作」の実習を行っておられます。コンテスト形式で各生徒作品の評価も行うようですが、今回の授業は、この実習のまとめ的な位置付けとなるとのことです。
   

 

 記録: 池田さん(日本文教出版)

  
  明浄学院高等学校での授業公開キャラバンは2回目になります。今回の学習内容は「モンタージュ理論基礎実習」。情報の統合の単元で,イメージCM制作を行う流れの中に,この授業を組み込んでいます。野口先生と今井先生の二人でメディアリテラシーにもつながる内容を目指しました。
   

授業風景

チャイムが鳴る前の教室。落ち着いたBGMが流れる中に生徒がやってきます。

授業者の野口先生です。

授業の流れはセンターモニターにPowerPointで表示されます。

(PDF)

1枚の写真(下の赤ちゃんの写真)を見せます。
この写真に色々な写真を組み合わせます。
右の4つのサンプルを見せ、それぞれの写真から
感じた印象をエクセルシートに入力させます。

サンプル1

サンプル2

サンプル3

サンプル4

入力されたシート

各サンプルに対しての生徒の印象シート

(PDFファイル)

この生徒らの印象のエクセルシートを見せながら、野口先生は、「みなさんが書いてくれた印象を見ると,同じ赤ちゃんの写真でも,他の写真と組み合わせることで見る人の印象が違ってくることがわかりましたね。この赤ちゃんは無表情に見えますが,おせち料理と組み合わせたら「おいしそう」,大きな口を開けたアザラシと組み合わせると「こわい」と感じているように見えますね。」とコメントされました。

次は、グループに分けての作業です。

野口先生の説明:
「では次は,みなさんにもやってもらいましょう。グループ作業にします。1枚の無表情の男性の写真を用意しました。また、共有フォルダの中にもいろいろな写真がありますので,この男性の写真と組み合わせて,「喜怒哀楽」を表現してみてください。

お題は「喜怒哀楽」
無表情男性の写真
共有フォルダ内の写真素材1
共有フォルダ内の写真素材2
生徒たちは楽しそうに写真を組み合わせています。
それでは各グループの作品を見てみましょう。 グループAの作品
 
グループBの作品
                              (いずれもPDFファイル)
グループCの作品
  
グループDの作品

野口先生が今日の授業のまとめをされました。

うん。なかなかよかったですね。1枚の写真がもつ意味は,ほかの写真や情報,社会の状況などと組み合わせて発信することで,意味が違ってくることがあります。今みなさんにはCM制作をしてもらっていますが,わかりやすい表現をするときにこういう組み合わせの理論は応用できますね。

ちょっと映像を見てもらいましょう。(世界のCMフェスティバルNo.2より,マクドナルドのCMを3本視聴)

どうですか?マクドナルドに行きたくなりましたね。(笑)
企業のCMは商品を買ってもらうための手段ですから,非常にうまく作られています。参考にしてみてください。

だけど,こうした手法は情報操作にも使われることがあります。
 
湾岸戦争のときに,「イラクが悪い」ということを強調するために,原油まみれの水鳥の写真が報道でたびたび使われたことがありました。(右の写真)
 
湾岸戦争に関するニュースの中でこの写真を見せられたらどう思いますか?「何の罪もない水鳥が油まみれになって可愛そう。悪いのは戦争を起こしたイラクだ!」と思いませんか?けれど,この水鳥の写真は湾岸戦争とは全く関係がなかったという節があります。
 
イメージを植えつけて,イラクとの戦争を正当化するための情報操作だったのではないかと言われています。(真相は解明されていませんが,そういう可能性が指摘されています。)情報を受け取るときにも発信するときにも大事なことですので,みなさんも覚えておいてくださいね。

それから,今回の授業で使った男性の写真ですが,実は今日,後ろにいらっしゃっています。学校の先生です。津田先生ありがとうございました。(生徒爆笑と拍手)

このように、モンタージュ理論の基礎を体験し、今後のCM作成に生かすための授業でした。

野口先生、今井先生、生徒の皆さん、どうもありがとうございました。

■メデイアリテラシー基礎実習余話■
  
メディアリテラシー基礎実習の授業を実施できなかったクラスでのエピソードをひとつ。

アップになる2匹の犬の写真。
その上に文字が浮かび上がってくる。
「わたし達の大切な存在」
「なのに自分の勝手で犬を捨てる人がいる・・・・」
「毎年何十万匹もガス室で処分されている・・・」
「そんな勝手なことさせないっっ!!」

これは生徒Mさんの力作である。イメージCM制作手直しの実習中にこのMさんから質問を受けた。
「先生、この写真の犬、私のペットやねん。だから、言葉の部分『わたし達の大切な存在』じゃなくて『わたしの大切な存在』の方が正しいのとちゃうかなあ」と。
「CMを見る側は写真の犬が誰のペットなのかまでわからないよ。だから『わたし達の・・・』と一般的なショットとして見せることが可能になる。あなたの意図はどっちやろ?最終、効果的に表現できる方を選ぼう。」とその場を離れた。
私は、このわずか1、2分のMさんとのやり取りの中に大事なことが含まれているなと思った。写真映像のショットをどう見せるか、相手にどう伝えるか。事実とイメージショットの違いは?これってまさにメディアリテラシーに関わることだ。そうか、Mさんのクラスではメディアリテラシー基礎実習の授業を実施していなかったんだっけ。
気になった私は授業後、共有フォルダのCMエントリーフォルダの中のMさんのファイルを開いて、「なるほど」と思った。
犬に強い思い入れのあるMさんは、悩んだ末、冒頭のような文字を入れてCMを最終提出していたのだった。

今井隆史

 
意見交換会  16:25 〜 17:50

司会: 長尾先生(大阪信愛女学院短大) 

  



長尾先生:
万年司会の長尾です。今日は第40回目の記念になります。まず教頭先生にご挨拶いただきます。

 


岡田教頭先生:
私も初年度だけですが今井先生といっしょに情報を担当していました。ここに来ていただいているいろんな先生の授業も拝見したことがありまして,情報科には非常に愛着があります。情報モラルもいわれていますが,イメージングという領域も大切だと考えています。今回のキャラバンが有意義のうちに終えられることを願いまして簡単ですがご挨拶させていただきます。
長尾先生:
では続きまして会長の奥田先生のご挨拶をいただきます。

奥田先生:
キャラバンは今日で5年目に入ります。40回目ということもあり,けじめのある回であります。記念ですので,紅白饅頭を用意しました。このキャラバンは,実践レベルのコミュニケーションの場ということで多くの先生方にご活用いただいているのは嬉しい限りです。先生方同士の活発なコミュニケーションの結果,ICTプロジェクトをはじめとするいろいろなプロジェクトにも発展しました。情報に関わらず,学校の情報化,教育の情報化,またコミュニケーション教育の開発ということで,今後も展開していきたいですね。


長尾先生:
ではお饅頭を,ひとつずつ受け取っていただいて。開けたら具合悪いですか?

今井先生:
いや,あの・・・。飲食禁止ですけれど,それはもう,あけていただいても。(笑)

長尾先生:
ではみなさん,お饅頭を食べながらやりましょう。(笑)

長尾先生:
今日は30名ほど集まっていただきました。ありがとうございます。この時期はさすがに高校も入試を控えまして,忙しい時期ですが,初めてきていただいた方がたくさんいらっしゃいます。またお話いただくときに簡単にご所属とお名前を言っていただければと思います。企業の方も10人ほど来てくださいました。それに公立の先生も3人,大学の先生や学生さんも。いろんな人たちのいろんな目で見るのが意見交換会の醍醐味でもあります。それではまず,授業者の先生からお願いします。

野口先生:
今日はありがとうございます。モンタージュ理論ということで,題材の選択から企画など,今井先生に考えていただいて,僕が授業を進めていくという形になっています。今日のネタのひとつのきっかけは,今やっているCM制作で写真を入れましょうということにしているんだけれど,そのヒントとなるような内容をということで,画像の組み合わせによって印象が変わるというモンタージュ理論を入れてみました。実際に原油まみれの水鳥の写真などの例もあります。だまされないようにとか,うまく表現したいときにとかいうことで,こういう理論を知っておくのはいいのではと思っています。一番最初の4つのサンプルをどのように見せるかというので試行錯誤しながらやっていました。生徒からのいろんな意見も,私たちの発見につながるものが多かったです。今日はいろいろご意見いただければと思います。

長尾先生:
というわけで,みなさんからご意見をいっぱいいただきましょう。今センターモニターにブレストボードが出ていますが,これを見て来ていただいた先生はどのくらいいらっしゃいますか。あ,あんまりいらっしゃらないので,ちょっと説明しておきます。清教学園の小林先生が開発してくださったものです。気軽にみんなの意見を集めようという趣旨です。・・・・(ブレインストーミングボードの説明:約10分)

ブレインストーミングボードはここから見れます


長尾先生:
さて,メディアリテラシーですが,このボードを見てもみなさん難しいと感じておられるようです。この中でメディアリテラシーについて扱ったことのある先生はいらっしゃいますか?

柴山先生(小林聖心女子学院):
ジェンダーの問題とかやったことありますが,一年のカリキュラムの中に組み込むのが難しいので,うまく組み込めないかなと考えているところです。立命館の鈴木みどり先生のメディアリテラシー講座に参加したことがあって,そこで得た題材を使うことが多いです。

 

鈴木みどり先生(立命館)のページはこちらから

笹谷先生(相愛):
湾岸戦争の鳥もそうですが,ある事件があって,若い男とサラリーマンがけんかしたというのがあって,どちらがワルモノかというのを動画で少し表現を変えているところがあったので,それを使ったことがあります。産経新聞の記者が月とコウノトリの写真を合成したこともあった。ところで,「モンタージュ理論」というのははじめて聞いたんですが,これを知ったきっかけって何なんでしょうか。

今井先生:
モンタージュ理論というのは私が学生のときに聞きまして,セルゲイ・エイジェンシュテイン(ロシアの映画監督)とセットで話を聞いたんですが,戦艦ポチョムキンという映画も見た。映像の組み合わせというのは前々から興味があって,生徒はあまり考えもなく映像を組み合わせるんですけれど,それでいいのかなーと思っていました。

長尾先生:
関大の学生に聞いたらメディア論などの関係で知っている学生が多かった。グーグルで調べてみてもいろいろ出てきますね。

笹谷先生:
モンタージュ理論というのは前が後に影響を与えるんでしょうか。その逆なんでしょうか。

今井先生:
私の理解では組み合わせによって意味が生まれるということです。

長尾先生:
今井先生,戦艦ポチョムキンの映像は今見れますか?

今井先生:
見れますけど・・・,見ると泥沼にはまる恐れが・・・。(といいつつ準備)

長尾先生:
企業の方でお詳しい方がいらっしゃるのではないかと思っているのですが,平井さんがいらっしゃるということでちょっと調べてみたら,その筋のプロの方とお見受けしましたが。

平井さん(有限会社カヤ):
平井といいます。そんなたいそうなものじゃありませんが一応、映像制作をしています。メディアリテラシーの教材も作っています。プロの立場から少し申し上げるとするならば、今回の授業を見せていただいて生徒に与えた写真の選択が、少し「甘い」という気がしました。結局のところ、それぞれの素材一枚一枚が面白くないので,組み合わせてもやはり面白くないということになってしまっていたようです。もっとヨリの映像(アップの映像)があると良かったと思います。それからよくやるのは、3枚の写真を与えておき、その見せる順番を変えるだけで受け取る意味合いが全然変ってしまうという手法を用いると生徒には、わかり易いかもしれません。つまり材料をそのままにしておいて順番を入れ替えるのです。恐らくこれが一番モンタージュ理論の基本になると思います。

今井先生:
準備ができましたので。(戦艦ポチョムキン,「オデッサの階段」のシーンを視聴)


笹谷先生:
モンタージュ理論には,対称という意味もあると思った。女性と男性,恐竜とマクドナルドのポテトとか。

長尾先生:
授業する立場として,津田先生どうですか?いまのポチョムキンの映像も見せてもどう解説したらいいのか,難しいですね。

津田先生(薫英):
モデルの津田です。自分自身が喜怒哀楽にされていたので,自分の気持ちが変わった気がしたのは奇妙な体験でした。ところで,生徒が作品を作ったときに,自分の作品を他の人が見てどう思ったかというのは気になると思う。それぞれの気持ちが集約されたときに,自分の作った作品はこう見られてるんだなという風に思えるわけで。

長尾先生:
なるほど。岡本先生はどうでしょうか。


岡本先生(聖母被昇天):
社会の授業で,アメリカがクウェートのニセモノの医者と看護師を出してイラクの悪行を強調した映像があったので,それを見せたことがあった。クラスの意見をたくさん集めておいて,それを多数の人に伝えるにはどう編集したらいいだろうかということができるといいかなーと思っている。あまりまとまらないですけれど。


長尾先生:
宮浦先生はどうですか?

宮浦先生(須磨学園):
私もメディアリテラシーをやりたいやりたいと思っているけれど,なかなかやれません。以前,サンテレビの取材写真がどのようにニュースになっていくのかというのを見せながら授業をやった先生の話を聞いたことがありました。ニュースは作られているということをわからせてあげたいなーと。

長尾先生:
メディアリテラシーを扱うときには,やはりそういう素材を用意するのが大変ですね。カヤの平井さん,素材を提供していただくわけにはいきませんか?(笑)

長尾先生:
ところで,池田さん,振ってもいいですか?メディアリテラシーを情報の授業の中で扱うときにはどんなことを考えればいいんでしょうね。

池田(日本文教出版):
いや,あの・・・。そうですね。今回は楽しみにして来ました,で,さきほど戦艦ポチョムキンの映像を見まして,今井先生もこれを見ると泥沼にとおっしゃっていましたけれど,この映像は私も大学のときに「AVメディア制作論」という久保田賢一先生が担当している授業で見たんですけれど,解説がないと理解するのが難しいと思います。結局,この映画以前は,カットとカットをつなぐという映像の手法がなくて,例えば芝居の舞台を長回しで撮ったものをそのまま見せているというようなものが主流だったと聞いています。エイゼンシュテインがモンタージュ理論というものを考え出して,その後,今ある映像のように,カットとカットをつないで意味を構成していく映像が出てきた。今はこれが当たり前になっているので,ポチョムキンを見ても何がすごいのかよくわからないと思う。例えば,オデッサの階段のシーンでは,撃たれた母親の手を離れた乳母車がひとりでに階段を下っていくシーンがよく題材になるのですが,ここで見なければいけないのは,乳母車の上からのショットでは赤ん坊が乳母車の中で泣いている。フレームの外にはおそらく人が居て,乳母車を揺らしながら階段を下りているのでしょう。次のカットでは,階段を下っていく乳母車を横から撮っている。けれどそんなことをすると,さきほどの赤ん坊が危ない。だから実際には赤ん坊は乗っていないはず。実際には赤ん坊は乗っていないのに,泣く赤ん坊を撮った上からのショットと組み合わせることで,あたかもそこに赤ん坊がいるかのように見せる。これでコサック兵の傍若無人さが強調されるわけです。多分ここを強調しないとモンタージュ理論の解説にはならないのではないかと思った。

 
モンタージュ理論をきっかけにメディアリテラシーの学習を進めるにあたっては,こういう体験を元に,私たちは情報によってだまされる可能性があるということに気付くことがまず必要なのかなという風に思いました。情報は人の手によって作られたものであって,作り手の都合の良いように構成される恐れがあります。もちろん倫理規定なども存在するのですが・・・。海外にはメディアリテラシーの教材がいくつかあるようで,これはメルプロジェクトの菅谷先生が紹介していたビデオですが,「スパゲッティのなる木」を紹介する映像があります。ある地方でスパゲッティの収穫をしている風景を撮ったというものなのですが,こんなのは嘘に決まっているのですが,魚は切り身の状態で海を泳いでいると思っている子どもたちにとっては,本当のことだと信じかねないものでもある。あまりどぎつい内容のものじゃない,面白おかしいジョークめいた映像の方が教材としてはいいのかもしれない。映像ばかりじゃなくて,Webにも嘘というかジョークがたくさんあります。

今日のメルマガで少し紹介したのは,1ヨッタバイトのスペースがもらえるというフリーメールサービスを紹介しているページ。1ヨッタバイトというのは,メガ,ギガ,テラ,ペタ,エクサ,ゼッタ,ヨッタですから,10の24乗バイトです。海外のサイトなので英語だし,デザインもシンプルでよくできているし,一瞬,私も信じてしまって,すぐにアカウントをもらおうと思った。すると招待されないとアカウントはもらえないと出てきた。でもふと思ったんですね。1ヨッタバイトの容量をフリーで提供するなんてことができるのかと。で,計算してみました。1Gpbsの回線を持っていたとして,1ヨッタバイトを使い切るのにどれだけの時間がかかるかと。そしたら2億年だとか3億年かかることがわかった。そんなものを一人ひとりに割り当てるなんて不可能でしょう。サイトには広告もないのですから。その他にも,クリスマスにサンタクロースを戦闘機で追跡してリアルタイムに現在のサンタクロースの位置を知らせるWebだとか,情報の信頼性のネタになりそうなサイトは探せばたくさんありそうです。情報科でメディアリテラシーを扱う場合には,少し情報の内容ともかぶった題材の方がいろいろ狙えていいのかもしれません。


長尾先生:
なるほど。市川先生はどうでしょう。

市川先生(大阪信愛女学院短大):
高校生の理解ということで,シンプルに単純化することがまず必要。日本生命のCMは静止画と音楽だけで構成されているものだけれど,すごく感動的なシーン。写真素材のすごさというのもあるが。あと,今日の授業の生徒の反応を知ることができるといいなーと思いました。

 

長尾先生:
そうですね。浜崎先生,何かお話いただけませんか?

浜崎先生(府立松原高校):
クレショフ効果ですか,生徒をみていたら,写真を選ぶときにあれこれ議論していた。ああいう雰囲気が大事だなーと思った。いろんな意味にとれる写真をたくさん集めておけばよかったなーと思う。素材を用意する側がすごくしんどいなーと思う。

長尾先生:
森多先生はいかがですか?

森多先生(府立大正高校):
私は数学なんですけれど,なかなか難しい題材でした。自分だったらどうするかなーと思っていたんですけれど,非常によくまとめられていてよかった。しかも,CM制作の中にこの内容を入れ込んでいるということでカリキュラム的にも工夫されているなーと思った。

長尾先生:
あそこでサンプルが赤ちゃんの写真だったけれど,これは何か意味はあったんですか?

今井先生:
赤ちゃんにしたのは,予定してた男性の無表情の写真というのが,組み合わせたときにイメージが読みにくかったんですね。赤ん坊の場合は表情を読みやすいかもしれないなと思ってはめたんですけれど・・・。写真素材自体は苦労しました。うまく選びきれてません。


長尾先生:
小池先生,大学の先生の立場から何かコメントいただけませんか?

小池先生(産業技術短大):
情報倫理の立場でいくと,情報操作というのが当然出てくるわけで,見せ方で全然かわってくるというのは面白かった。モンタージュ理論につっこまない形で話をしたいんですけれど,サンプル4つあって,100%全てみんなが同じイメージを持てるかどうか,印象が違うというのが起こりうるというのは,CM制作するということにおいてやや不完全なのではないかというアプローチもある。CM制作をするというときには,どうすれば100%に近づけられるのかということを考えるのがCM制作の肝になるんじゃないかなと思った。あと,実習の進め方ですが,活発な班もありましたが,人まかせになっている班もありました。6台あるわけですから,それぞれに候補を選ばせてどれがいいかを考えさせたらいいのではないかと思った。それから,喜怒哀楽といったときに,なにが喜で何が怒で何が・・・というのも時間があればつきつめた方がいいんじゃないかと思いました。それから,ある生徒をみていて思ったんですけれど,いろんな写真を選ぶ段で,いきなり写真をいれていた。一度選んだものを組み合わせて試してみて,印象が違えばまた変えるという作業が見られなかった。これは残念でした。それから,サンプルに引きずられている作品もみられた。

長尾先生:
もうひとり大学の先生,平田先生はどうでしょう。

平田先生(京都女子大学):
○○リテラシーという言葉は,情報の先生だと必ず聞くと思うんですが,夜の6時のニュースをぱっと見せるだけでも,今日のようなところで使える映像はあると思う。スタジオでしゃべればいいのに,わざわざ記者が自民党本部の前でしゃべったり,あれはあれでその映像に何か伝えるものがあるんだろうということに気付く。尼崎の脱線事故の報道のときに,宝塚線ではありえない,JRと阪急電車の併走の映像があったということを聞いたり。四万十川に豆腐を放流したり,バームクーヘンを天日干にしたりという妙なニュースも字だけでなくて,写真があるとWeb上にあるニュースでも信じてしまう。大学生でも半分が信じる。嘘のニュースの中に一つだけ本当のニュースをまぜておいて話をすると面白い。


長尾先生:
そういうネタというのはどこから探してくるんですか?

平田先生:
口コミとか自分で探したりとか。さっきの話は,虚構新聞社というのがあるんですけれど。

右の「虚構新聞」のページ

長尾先生:
情報操作の授業は、興味深いですよね。湾岸戦争の水鳥の写真や月にコウノトリの写真を合成したものなど、真実ではない写真を例に挙げた授業展開は、色々と考えられますね。竹から生まれた「かぐや姫」の話などと比べてみるのも面白いですし、色々と是非論があるでしょう。


高瀬先生(帝塚山大学):
感心しました。今井先生の前回の授業も今回の授業も。非常によく工夫されていて。高校生がこういう授業を受けて大学に上がってくるのですから,大学もうかうかしていられない。

長尾先生:
そのほかにもたくさんお話を伺いたいんですけれど,懇親会が6時からということでたくさん集まってください。

津田先生:
40回続いたキャラバンですが,次のステージはどういうところなのか,またみなさんのご意見聞かせてください。

長尾先生:
では、最後に今日の授業担当の野口先生と今井先生、どうもありがとうございました。

その後、近くで、懇親会が盛大に行われました。

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