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長尾先生:
万年司会の長尾です。今日は第40回目の記念になります。まず教頭先生にご挨拶いただきます。
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岡田教頭先生:
私も初年度だけですが今井先生といっしょに情報を担当していました。ここに来ていただいているいろんな先生の授業も拝見したことがありまして,情報科には非常に愛着があります。情報モラルもいわれていますが,イメージングという領域も大切だと考えています。今回のキャラバンが有意義のうちに終えられることを願いまして簡単ですがご挨拶させていただきます。
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長尾先生:
では続きまして会長の奥田先生のご挨拶をいただきます。
奥田先生:
キャラバンは今日で5年目に入ります。40回目ということもあり,けじめのある回であります。記念ですので,紅白饅頭を用意しました。このキャラバンは,実践レベルのコミュニケーションの場ということで多くの先生方にご活用いただいているのは嬉しい限りです。先生方同士の活発なコミュニケーションの結果,ICTプロジェクトをはじめとするいろいろなプロジェクトにも発展しました。情報に関わらず,学校の情報化,教育の情報化,またコミュニケーション教育の開発ということで,今後も展開していきたいですね。
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長尾先生:
ではお饅頭を,ひとつずつ受け取っていただいて。開けたら具合悪いですか?
今井先生:
いや,あの・・・。飲食禁止ですけれど,それはもう,あけていただいても。(笑)
長尾先生:
ではみなさん,お饅頭を食べながらやりましょう。(笑)
長尾先生:
今日は30名ほど集まっていただきました。ありがとうございます。この時期はさすがに高校も入試を控えまして,忙しい時期ですが,初めてきていただいた方がたくさんいらっしゃいます。またお話いただくときに簡単にご所属とお名前を言っていただければと思います。企業の方も10人ほど来てくださいました。それに公立の先生も3人,大学の先生や学生さんも。いろんな人たちのいろんな目で見るのが意見交換会の醍醐味でもあります。それではまず,授業者の先生からお願いします。
野口先生:
今日はありがとうございます。モンタージュ理論ということで,題材の選択から企画など,今井先生に考えていただいて,僕が授業を進めていくという形になっています。今日のネタのひとつのきっかけは,今やっているCM制作で写真を入れましょうということにしているんだけれど,そのヒントとなるような内容をということで,画像の組み合わせによって印象が変わるというモンタージュ理論を入れてみました。実際に原油まみれの水鳥の写真などの例もあります。だまされないようにとか,うまく表現したいときにとかいうことで,こういう理論を知っておくのはいいのではと思っています。一番最初の4つのサンプルをどのように見せるかというので試行錯誤しながらやっていました。生徒からのいろんな意見も,私たちの発見につながるものが多かったです。今日はいろいろご意見いただければと思います。
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長尾先生:
というわけで,みなさんからご意見をいっぱいいただきましょう。今センターモニターにブレストボードが出ていますが,これを見て来ていただいた先生はどのくらいいらっしゃいますか。あ,あんまりいらっしゃらないので,ちょっと説明しておきます。清教学園の小林先生が開発してくださったものです。気軽にみんなの意見を集めようという趣旨です。・・・・(ブレインストーミングボードの説明:約10分)
ブレインストーミングボードはここから見れます
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長尾先生:
さて,メディアリテラシーですが,このボードを見てもみなさん難しいと感じておられるようです。この中でメディアリテラシーについて扱ったことのある先生はいらっしゃいますか? |
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柴山先生(小林聖心女子学院):
ジェンダーの問題とかやったことありますが,一年のカリキュラムの中に組み込むのが難しいので,うまく組み込めないかなと考えているところです。立命館の鈴木みどり先生のメディアリテラシー講座に参加したことがあって,そこで得た題材を使うことが多いです。
鈴木みどり先生(立命館)のページはこちらから
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笹谷先生(相愛):
湾岸戦争の鳥もそうですが,ある事件があって,若い男とサラリーマンがけんかしたというのがあって,どちらがワルモノかというのを動画で少し表現を変えているところがあったので,それを使ったことがあります。産経新聞の記者が月とコウノトリの写真を合成したこともあった。ところで,「モンタージュ理論」というのははじめて聞いたんですが,これを知ったきっかけって何なんでしょうか。
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今井先生:
モンタージュ理論というのは私が学生のときに聞きまして,セルゲイ・エイジェンシュテイン(ロシアの映画監督)とセットで話を聞いたんですが,戦艦ポチョムキンという映画も見た。映像の組み合わせというのは前々から興味があって,生徒はあまり考えもなく映像を組み合わせるんですけれど,それでいいのかなーと思っていました。
長尾先生:
関大の学生に聞いたらメディア論などの関係で知っている学生が多かった。グーグルで調べてみてもいろいろ出てきますね。
笹谷先生:
モンタージュ理論というのは前が後に影響を与えるんでしょうか。その逆なんでしょうか。
今井先生:
私の理解では組み合わせによって意味が生まれるということです。
長尾先生:
今井先生,戦艦ポチョムキンの映像は今見れますか?
今井先生:
見れますけど・・・,見ると泥沼にはまる恐れが・・・。(といいつつ準備)
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長尾先生:
企業の方でお詳しい方がいらっしゃるのではないかと思っているのですが,平井さんがいらっしゃるということでちょっと調べてみたら,その筋のプロの方とお見受けしましたが。
平井さん(有限会社カヤ):
平井といいます。そんなたいそうなものじゃありませんが一応、映像制作をしています。メディアリテラシーの教材も作っています。プロの立場から少し申し上げるとするならば、今回の授業を見せていただいて生徒に与えた写真の選択が、少し「甘い」という気がしました。結局のところ、それぞれの素材一枚一枚が面白くないので,組み合わせてもやはり面白くないということになってしまっていたようです。もっとヨリの映像(アップの映像)があると良かったと思います。それからよくやるのは、3枚の写真を与えておき、その見せる順番を変えるだけで受け取る意味合いが全然変ってしまうという手法を用いると生徒には、わかり易いかもしれません。つまり材料をそのままにしておいて順番を入れ替えるのです。恐らくこれが一番モンタージュ理論の基本になると思います。
今井先生:
準備ができましたので。(戦艦ポチョムキン,「オデッサの階段」のシーンを視聴)
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笹谷先生:
モンタージュ理論には,対称という意味もあると思った。女性と男性,恐竜とマクドナルドのポテトとか。
長尾先生:
授業する立場として,津田先生どうですか?いまのポチョムキンの映像も見せてもどう解説したらいいのか,難しいですね。
津田先生(薫英):
モデルの津田です。自分自身が喜怒哀楽にされていたので,自分の気持ちが変わった気がしたのは奇妙な体験でした。ところで,生徒が作品を作ったときに,自分の作品を他の人が見てどう思ったかというのは気になると思う。それぞれの気持ちが集約されたときに,自分の作った作品はこう見られてるんだなという風に思えるわけで。
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長尾先生:
なるほど。岡本先生はどうでしょうか。
岡本先生(聖母被昇天):
社会の授業で,アメリカがクウェートのニセモノの医者と看護師を出してイラクの悪行を強調した映像があったので,それを見せたことがあった。クラスの意見をたくさん集めておいて,それを多数の人に伝えるにはどう編集したらいいだろうかということができるといいかなーと思っている。あまりまとまらないですけれど。
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長尾先生:
宮浦先生はどうですか?
宮浦先生(須磨学園):
私もメディアリテラシーをやりたいやりたいと思っているけれど,なかなかやれません。以前,サンテレビの取材写真がどのようにニュースになっていくのかというのを見せながら授業をやった先生の話を聞いたことがありました。ニュースは作られているということをわからせてあげたいなーと。
長尾先生:
メディアリテラシーを扱うときには,やはりそういう素材を用意するのが大変ですね。カヤの平井さん,素材を提供していただくわけにはいきませんか?(笑)
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長尾先生:
ところで,池田さん,振ってもいいですか?メディアリテラシーを情報の授業の中で扱うときにはどんなことを考えればいいんでしょうね。
池田(日本文教出版):
いや,あの・・・。そうですね。今回は楽しみにして来ました,で,さきほど戦艦ポチョムキンの映像を見まして,今井先生もこれを見ると泥沼にとおっしゃっていましたけれど,この映像は私も大学のときに「AVメディア制作論」という久保田賢一先生が担当している授業で見たんですけれど,解説がないと理解するのが難しいと思います。結局,この映画以前は,カットとカットをつなぐという映像の手法がなくて,例えば芝居の舞台を長回しで撮ったものをそのまま見せているというようなものが主流だったと聞いています。エイゼンシュテインがモンタージュ理論というものを考え出して,その後,今ある映像のように,カットとカットをつないで意味を構成していく映像が出てきた。今はこれが当たり前になっているので,ポチョムキンを見ても何がすごいのかよくわからないと思う。例えば,オデッサの階段のシーンでは,撃たれた母親の手を離れた乳母車がひとりでに階段を下っていくシーンがよく題材になるのですが,ここで見なければいけないのは,乳母車の上からのショットでは赤ん坊が乳母車の中で泣いている。フレームの外にはおそらく人が居て,乳母車を揺らしながら階段を下りているのでしょう。次のカットでは,階段を下っていく乳母車を横から撮っている。けれどそんなことをすると,さきほどの赤ん坊が危ない。だから実際には赤ん坊は乗っていないはず。実際には赤ん坊は乗っていないのに,泣く赤ん坊を撮った上からのショットと組み合わせることで,あたかもそこに赤ん坊がいるかのように見せる。これでコサック兵の傍若無人さが強調されるわけです。多分ここを強調しないとモンタージュ理論の解説にはならないのではないかと思った。
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モンタージュ理論をきっかけにメディアリテラシーの学習を進めるにあたっては,こういう体験を元に,私たちは情報によってだまされる可能性があるということに気付くことがまず必要なのかなという風に思いました。情報は人の手によって作られたものであって,作り手の都合の良いように構成される恐れがあります。もちろん倫理規定なども存在するのですが・・・。海外にはメディアリテラシーの教材がいくつかあるようで,これはメルプロジェクトの菅谷先生が紹介していたビデオですが,「スパゲッティのなる木」を紹介する映像があります。ある地方でスパゲッティの収穫をしている風景を撮ったというものなのですが,こんなのは嘘に決まっているのですが,魚は切り身の状態で海を泳いでいると思っている子どもたちにとっては,本当のことだと信じかねないものでもある。あまりどぎつい内容のものじゃない,面白おかしいジョークめいた映像の方が教材としてはいいのかもしれない。映像ばかりじゃなくて,Webにも嘘というかジョークがたくさんあります。
今日のメルマガで少し紹介したのは,1ヨッタバイトのスペースがもらえるというフリーメールサービスを紹介しているページ。1ヨッタバイトというのは,メガ,ギガ,テラ,ペタ,エクサ,ゼッタ,ヨッタですから,10の24乗バイトです。海外のサイトなので英語だし,デザインもシンプルでよくできているし,一瞬,私も信じてしまって,すぐにアカウントをもらおうと思った。すると招待されないとアカウントはもらえないと出てきた。でもふと思ったんですね。1ヨッタバイトの容量をフリーで提供するなんてことができるのかと。で,計算してみました。1Gpbsの回線を持っていたとして,1ヨッタバイトを使い切るのにどれだけの時間がかかるかと。そしたら2億年だとか3億年かかることがわかった。そんなものを一人ひとりに割り当てるなんて不可能でしょう。サイトには広告もないのですから。その他にも,クリスマスにサンタクロースを戦闘機で追跡してリアルタイムに現在のサンタクロースの位置を知らせるWebだとか,情報の信頼性のネタになりそうなサイトは探せばたくさんありそうです。情報科でメディアリテラシーを扱う場合には,少し情報の内容ともかぶった題材の方がいろいろ狙えていいのかもしれません。 |
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長尾先生:
なるほど。市川先生はどうでしょう。
市川先生(大阪信愛女学院短大):
高校生の理解ということで,シンプルに単純化することがまず必要。日本生命のCMは静止画と音楽だけで構成されているものだけれど,すごく感動的なシーン。写真素材のすごさというのもあるが。あと,今日の授業の生徒の反応を知ることができるといいなーと思いました。
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長尾先生:
そうですね。浜崎先生,何かお話いただけませんか?
浜崎先生(府立松原高校):
クレショフ効果ですか,生徒をみていたら,写真を選ぶときにあれこれ議論していた。ああいう雰囲気が大事だなーと思った。いろんな意味にとれる写真をたくさん集めておけばよかったなーと思う。素材を用意する側がすごくしんどいなーと思う。
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長尾先生:
森多先生はいかがですか?
森多先生(府立大正高校):
私は数学なんですけれど,なかなか難しい題材でした。自分だったらどうするかなーと思っていたんですけれど,非常によくまとめられていてよかった。しかも,CM制作の中にこの内容を入れ込んでいるということでカリキュラム的にも工夫されているなーと思った。
長尾先生:
あそこでサンプルが赤ちゃんの写真だったけれど,これは何か意味はあったんですか?
今井先生:
赤ちゃんにしたのは,予定してた男性の無表情の写真というのが,組み合わせたときにイメージが読みにくかったんですね。赤ん坊の場合は表情を読みやすいかもしれないなと思ってはめたんですけれど・・・。写真素材自体は苦労しました。うまく選びきれてません。
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長尾先生:
小池先生,大学の先生の立場から何かコメントいただけませんか?
小池先生(産業技術短大):
情報倫理の立場でいくと,情報操作というのが当然出てくるわけで,見せ方で全然かわってくるというのは面白かった。モンタージュ理論につっこまない形で話をしたいんですけれど,サンプル4つあって,100%全てみんなが同じイメージを持てるかどうか,印象が違うというのが起こりうるというのは,CM制作するということにおいてやや不完全なのではないかというアプローチもある。CM制作をするというときには,どうすれば100%に近づけられるのかということを考えるのがCM制作の肝になるんじゃないかなと思った。あと,実習の進め方ですが,活発な班もありましたが,人まかせになっている班もありました。6台あるわけですから,それぞれに候補を選ばせてどれがいいかを考えさせたらいいのではないかと思った。それから,喜怒哀楽といったときに,なにが喜で何が怒で何が・・・というのも時間があればつきつめた方がいいんじゃないかと思いました。それから,ある生徒をみていて思ったんですけれど,いろんな写真を選ぶ段で,いきなり写真をいれていた。一度選んだものを組み合わせて試してみて,印象が違えばまた変えるという作業が見られなかった。これは残念でした。それから,サンプルに引きずられている作品もみられた。
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長尾先生:
もうひとり大学の先生,平田先生はどうでしょう。
平田先生(京都女子大学):
○○リテラシーという言葉は,情報の先生だと必ず聞くと思うんですが,夜の6時のニュースをぱっと見せるだけでも,今日のようなところで使える映像はあると思う。スタジオでしゃべればいいのに,わざわざ記者が自民党本部の前でしゃべったり,あれはあれでその映像に何か伝えるものがあるんだろうということに気付く。尼崎の脱線事故の報道のときに,宝塚線ではありえない,JRと阪急電車の併走の映像があったということを聞いたり。四万十川に豆腐を放流したり,バームクーヘンを天日干にしたりという妙なニュースも字だけでなくて,写真があるとWeb上にあるニュースでも信じてしまう。大学生でも半分が信じる。嘘のニュースの中に一つだけ本当のニュースをまぜておいて話をすると面白い。
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長尾先生:
そういうネタというのはどこから探してくるんですか?
平田先生:
口コミとか自分で探したりとか。さっきの話は,虚構新聞社というのがあるんですけれど。
右の「虚構新聞」のページ
長尾先生:
情報操作の授業は、興味深いですよね。湾岸戦争の水鳥の写真や月にコウノトリの写真を合成したものなど、真実ではない写真を例に挙げた授業展開は、色々と考えられますね。竹から生まれた「かぐや姫」の話などと比べてみるのも面白いですし、色々と是非論があるでしょう。 |
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高瀬先生(帝塚山大学):
感心しました。今井先生の前回の授業も今回の授業も。非常によく工夫されていて。高校生がこういう授業を受けて大学に上がってくるのですから,大学もうかうかしていられない。
長尾先生:
そのほかにもたくさんお話を伺いたいんですけれど,懇親会が6時からということでたくさん集まってください。
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津田先生:
40回続いたキャラバンですが,次のステージはどういうところなのか,またみなさんのご意見聞かせてください。
長尾先生:
では、最後に今日の授業担当の野口先生と今井先生、どうもありがとうございました。
その後、近くで、懇親会が盛大に行われました。 |
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